創刊から51年続く日用品・生活雑貨専門の業界紙です。話題商品・業界最新情報をいち早くお届けします。

生活雑貨の業界紙:リビングタイムス
トップ > 業界のニュース > 座談会 メーカーが語る「物づくりの大事」 2024年 ❷
2024年01月01日

座談会 メーカーが語る「物づくりの大事」 2024年 ❷

座談会 経営陣が語り合う
個性がメーカーの力 ❷

 

SDGsビジネス
こう取り組んでいる


藤田清 このSDGsビジネスはこじつけて感もありますね。

竹原 大企業で積極的に推進していているのが目立つ。もともとわれわれが多用している鉄は90%超がリサイクル品ですが、一般には知られていません。この際、声高に主張するのも大事だと思います。新材料だけがいいとは限らない。

ある専門店様「ハンズ」では再生アルミを使った商品を大々的に販売しています。当社でも、お声掛けがあれば対応できる態勢にしておかねばと考えています。

田中 自力で取り組むにはハードルが高いですが、SDGsに絡めた企画があれば積極的に参加しようと考えています。

藤田清 われわれはリサイクル材料の積極的な活用をしています。SDGsビジネスに貢献していますという主張。1社では訴求力は弱く、業界で束ねないと主張は届かない。

竹原 当社は海外の再生材料を使った商品を近々、発売します。どんな反応があるか、楽しみです。現在、商談段階では、関心度は高いです。

また、国内メーカーでのトタン材の加工技術は高い。価格と性能のバランスも群を抜いている。もっとアピールしてもいいのでは。

藤田清 ホテルによってはレストランのフォーク、ナイフ、スプーンは最近、木製に切り替えたところもある。唇に張り付いて使いづらい。野外で使うのならともかく、食堂内では従来の金属製を使えばいいのに。

土井 レジ袋の有料化も環境寄与度は似たり寄ったりでしょう。

田中 パッケージには紙とプラスチックを使用していますが、分別のしやすさに重点を置いています。製品を保護して中身を見てもらえるという意味ではプラスチックは優秀な素材ですから。

藤田盛 当社では化粧箱のデザイン化は減っている。茶系のハードパッケージに印刷は単色という簡素な意匠が増えています。

 

変化激しく
対応に懸命

池永 物価高ですが、当社では低単価商品の比重が低くなり、代わって2万~3万円クラスが好調です。好みの変わり方が早く、変化に追いつくのに懸命です。

藤田盛 ネット販売では価格と機能や性能にバランスがあるか、神経を使っています。

ECサイトに消費者が書き込んだレビューにも神経を使う。レビューは商品とメーカーへの評価そのものですから、出店メーカーにとっておろそかにできません。

書き込まれたレビューの中には正当に評価されない事例もあります。販売店の対応に問題があった場合でも、「商品に問題あり」と受け止められる傾向です。レビュー記事はメーカーでは消去できず、ずっと残る。

 

アゲアゲ風潮
大企業と比べられる

藤田盛 コスト増は材料、副資材など分野が広く、しかも断続的に続く。商品の値上げは1回だけではコストの吸収にはつながらない。値上げは再度、再再度しなければ立ち行かない。大手メーカー関係者は「円安が止まないので、高コストは解決できない」と言う。

土井 大手企業の大幅な賃上げは声高に言わないでほしい。立ち位置の違うわれわれ中小零細企業にも波紋を広げてしまう。

田中 賃金の上昇は、本来、業績と連動するものだと考えますが、今の風潮だと、まずは賃金の上昇を、となっている。業績的に我慢の時期にある当社にとって厳しいところです。

藤田盛 マスコミの報道を見て中小零細企業と同一視してほしくない。ニュースで知った中小零細の従業員が「うちの会社も給料が上がるんや」と、錯覚されてしまう。

田中 取り巻く環境に比して、時期的にも当社の業績も芳しくないけど、新年に向けて商品開発を進めており、今は我慢しなければならない時期にある。

賃金の上昇は、本来、業績と連動するものだと考えますが、今の風潮だと、まずは賃金の上昇を、となっている。業績的に我慢の時期にある当社にとって厳しいところです。

土井 最低賃金のアップ率は3%なので、これに比例して正社員の人件費も同率程度に上げないとバランスが悪い。

藤田盛 23年10月1日から、大阪府最低賃金は1064円、41円引上げられています。

当社では扶養家族とされているパートタイマーさんが何人か働かれており、人件費が上がれば就業時間を減らし、税制優遇を適用されます。これが悪循環の要因です。

 

値上げ一度きり
吸収できない

藤田清 商品価格は基本的には毎年2月に上げています。最大上げ幅は2割でした。

当社の大半の商品価格は3けたですので、副資材などの原価上昇には緩衝材がありません。何も対策を講じなければ即ダメージにつながり、値上げしないとやっていけません。来期製品も同様に上げています。

値上げ交渉に費やすエネルギーが大きい。

藤田盛 当社ではコストの上昇分は生産ロットを上げて吸収するかたちを取りましたが、根本的な解決にはなりません。22年、値上げしたのですが、一部商品は足並みがそろっていません。

値上げ交渉は人海戦術なので、一部で混乱もしました。

田中 当社は新製品開発にエネルギーを注ごうと考えています。

土井 当社のプラスチック製造工場は福井県にあります。ここはブロー成形が中心なので、電気代が半端でない。北陸電力に払う電気代は3年間で、年間で2500万円~2600万円へと跳ね上がりました。

電力を使う工程は金属製品ならプレス工程で一時的ですが、ブロー成形は工程の大部分に電気を使う。製造上の特性です。

2回目の値上げは24年春に予定しています。問屋からは「小売業への説明が必要なので、値上げの理由を文書化してほしい」と言われる。

竹原 23年、当社でも値上を行いました。数年前の事情とは違い、値上げに対する理解は浸透していました。

 

業績アップに
EC専門業者

田中 もはやECは主要な販売ルートとなっていますが、チャンネルが増えるほどに値崩れのリスクが増えていくという現状が難しいしいところですね。

価格よりも価値を見出してくれる取引先様を大事にしたいと思うのは自然な流れでしょう。

藤田盛 私は強く言います。こうした現実を考慮されずにクーポンやポイントなどの販促の協力も要請されてコストが積み重なる。するべき主張はきっちりしていきたい。

22年11月、単独のEC販路を再開しました。売り上げは徐々に増えてきました。専門業者との共同作業でなければリターンは難しい。

運営の維持管理、広告・販促の立案などなど、結果が数値化され、プロらしい知見を活かしてもらっています。EC販路の業績を伸ばすには今のところ、この手法しかない。

販売額の業者に30%を支払う。掲載商品の撮影やページの作成費用、消費者からの問い合わせ業務、その対処などソフトも含めて、追加料金はありません。

池永 自社版ECを開設していますが、現状では微増程度です。
(❸へ続く)