創刊から51年続く日用品・生活雑貨専門の業界紙です。話題商品・業界最新情報をいち早くお届けします。

生活雑貨の業界紙:リビングタイムス
トップ > インタビュー > 2023 座談会・家庭用品業界の今 【リビングタイムス主催】3
2022年12月31日

2023 座談会・家庭用品業界の今 【リビングタイムス主催】3

2023 座談会・家庭用品業界の今
 

――急速に成長しているEC市場、また、円安を追い風とした海外市場への期待は。
山中
 コロナ禍によって自宅に居ながら買い物ができるため、EC市場の伸びシロはまだまだあります。海外市場も円安効果により当社でも取り組むべきターゲットです。

髙木 ECルートの伸びは以前よりは鈍化していますが、毎年増加が続いていると思われます。

EC事業を専門とされている取引先への売上とともに、従来からの得意先が事業拡大のためにECに参入されることによって上がってくる売上もあるので、ECルートでの販売額を正確に把握するのは困難ですが、実店舗向けの売上が落ちていることからすると、やはりECルートに購買が流れているものと思われます。

猪又 イノマタ化学の輸出に占める販売比率は少なくありません。現状では若干伸びています。円安によって輸出される商社には今商売がやりやすい環境です。値段交渉も比較的順調よく進んでいます。違うタイミングなら難しい値上げ交渉も今ならスムーズに進められています。

海外直取引にこだわり自力で

高垣 海外市場を開拓したいと進出したのは10年前です。間接的に業者を挟むのでなく、当社が直接取引することに強くこだわりました。商品サンプルを大きなトランクに詰め込み、欧州での見本市に出展しました。何としてでも自力で切り開いていこうというこだわりと意思がありました。

新規開拓は、国内市場でもなかなか難しいものです。海外では言語も商習慣も違います。今振り返ってみてタイミングがとても大事な要素の1つだったと思っています。

ただ、自力での開拓は問題を自分たちが真正面から受けるものですから、軌道修正をするにしても的確にできたのだと思っています。

ウクライナ・ロシア問題では、八幡化成の取引先が欧州あることから地理的に近くにあるため、避難されてきた人たちが間近に見られましたし、ドイツでは電力料金の高騰が影響を及ぼしたというような事案もありました。

鴻池 スケーターはファブレスメーカー(製品の企画・設計・提案し、金型・素材を製造会社に現物支給)形態のメーカーです。35年前、大阪から奈良へと社屋を移転したのを機に製造部門を全廃し、取引先メーカーへは、成型機の購入と当社製品の継続的な依頼をお約束し、現在ではプラスチック成型品にこだわらずに、素材による障害を排し、キャラクター商品をはじめ、消費者の求めるものを貪欲に追求しています。

販路においても国際的な視野に立ち、海外にも今以上に切り開いていきたいと考えております。

海外市場への進出はインターネットEC事業とともに重点課題です。売上の85~90%が日本国内で占めていますが、ほぼ限界でないでしょうか。インターネットなら海外の消費者に直接売ることもできます。

今、日本で生まれる子どもたちは年間70万人を下回りそうです。少子高齢現象は日本が向かっています。キャラクター商品を多く扱う当社には少子化は深刻。

箸や箸箱、弁当箱の販売が大半を占めていた頃、使用材料はプラスチックでした。当時、弁当箱を受注すると、次には食事用のコップの受注。取引を続けていくと、さらにガラス製のコップも求められ、マグカップも、バッグもというふうに、素材、用途など多様な注文へと広がりました。

自社製造を止めたため、他社の協力会社に作っていただくビジネスモデルが、「独自性もあって、作りたいものを作る」という基本姿勢の形成にいい影響をもたらしてくれました。

このため、仕入れ先を台湾にも求めました。それから10年後、その台湾メーカーは中国本土へ進出し、業容拡大に拍車がかかりました。

現在、海外工場での仕入れは全体の75%に膨らんでいます。

 

――最後に2023年を語ってください。
橋本 製販の距離近しいものに
猪俣 大手小売業から新規の取引
髙木 製販共通の課題を語ろう
山中 問屋の力と盛り上げ役に期待
池永 客の笑顔 想像して商売
髙垣 見本市開催に支障ないか
奥村 企業の体質 筋肉質にしたい
鴻池 ピンチはチャンスにできる

橋本 中山福は2年半後の2025年3月に創業百周年を迎えます。新たに101年目からスタートするにあたって、向かう将来への組織体制の整備をする上でも、メーカーの皆様のご意見を聞きたいと考えています。

コロナ禍の影響により以前に比べメーカーとの接点が薄くなったのか、取引メーカーから、「当社の商品を十分理解した上で営業活動、商売に臨んでほしい」という要望も頂戴しています。率直に耳を傾けたいと考えています。

髙木 「製販一体」を言葉だけでなく、腹を割って話し合い協力していくことが大切です。ともに栄える。

つながりの意識が薄れていくと、商売をやっていても面白味を感じなくなります。接点を密にし、話し合いの中から良好な信頼関係を生み出していきたい。幸い、コロナ感染も落ち着きつつあるので、様々な共通の課題を俎上(そじょう)にあげるいいタイミングだと思います。

山中 このような非常に厳しい状況の中、取引関係者同士が知恵、力を出し合い持ち寄り、意識をもって臨まないと業界全体は盛り上がらないと考えます。卸売業の方々にもぜひお力をお貸しいただきたいです。

橋本 支店ごとに、メーカー担当者に参加して頂き、商談会等も積極的に開催していければと考えています。

こういった機会で小売業とメーカーとの橋渡しで密度のより濃いものにしていき、価値ある情報をきっちり伝える。小売業とメーカーとの距離を今以上に近しいものにしていく役割を担いたいと思います。

池永 弊社も別部門で飲食の展開を行っております。店舗はお店の空間設計から、お客様に提供する器のデザインなどにも考え方を反映させます。メニューは本部スタッフと店舗調理責任者で考えます。実際調理するのがメーカーとすると、出来上がったメニューをホールスタッフが運びお客様に提供するのは問屋様という立ち位置でしょうか。ここでも価値、満足は最終的には消費者が決めます。

一連のオペレーションがちゃんと出来上がっている店は売上業績も高く、高額のメニューであってもお客様は受け入れてくれます。

経験上言えるのは調理スタッフとホールスタッフの両者の連係がうまくいっている店舗の売上業績はいい。逆の展開を見せる店舗というのは店舗内の空気が重く、バックヤードでの小声でつぶやいているのが漏れ聞こえてきます。そうした店の様子にはお客様は敏感です。

今こそ連帯感を強く、お客様の笑顔を想像したビジネスをしていきたいと思っています。

高垣 2023年は、国内外ともに見本市開催がどうなるのか、気になるところです。従来のように制限なく開催できるのだろうか。確かなことが見通せず、不安な気持ちです。

奥村 オクムラは中期的には筋肉質、贅肉のない企業体質を目指しています。

猪又 イノマタ化学に大手小売業から新規の取引開始の要望がありました。23年、新年ごろから立ち上がる予定です。

鴻池 スケーターの会長職の傍ら、企画と開発、製造を担当しています。

常々、どういうものが世の中で動き始めているかなど、常に注視しています。

24時間の生活の中でどんな商品がどのように使われているのか。調査会社を介し調査し続けています。1年間継続的に使われているアイテムは分野を問わず、広い範囲で商品化したいと考えています。

一人の客が、ある特定のキャラクター付き商品を24時間どのように使われているのか。

分かったことはあるキャラクター商品を好んだ人は、今持っていないアイテムを追加購入することでした。

有力キャラクターの起用ですが、現在、スケーターでは版権使用の契約はおよそ20社ですが、デザイン別やキャラクター別などに分類すると、およそ100種類に上ります。キャラクタービジネスには最低ロット数や版権使用の期限など、さまざまな課題があり、売れ行きの良くない商品アイテムも生じます。が、リスクを恐れていたら版権商材は扱えません。

失敗した事例は素早く処理をする。単純ですが、とても大切なことです。

最近では傘、サンダル、ポンチョなどへと用途や季節の関連用品へと広げています。レジャー用品、カー用品など、当社にとって新たな分野の商品企画には精力的に取り組んでいます。

産学官の連携、特に大学研究者の専門的な指導を仰ぎ、自治体からのさまざまな支援も頂戴しています。ペット用品の新規アイテムに取り組む際、ペットの習性、快適性などについて知識を乞います。

ただ、アウトドア用品などではキャンプや山登りなどの本格的な機能・性能を装備した分野への参入でなく、子どもたちが屋内外で遊べる用品に特化しています。例えば、当社のテントで「かくれんぼ」をするのに使うという。学習机を使わずに、家族が常駐する台所や食堂の片隅、ベッドの上で勉強している児童が多いことから学習用ボードを新発売しました。

販路が在りきだという意見もありますが、最終的に消費者がどの場面で何をどう使うかといった視点・発想から物づくりに取り組むことが大事だと考えています。同じアイテムでも使う人、場所条件などを柔軟にアレンジしていく、見立てていくという横への視点の移動や発想が大事でないでしょうか。

――終わり――