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2022年12月31日

2023 座談会・家庭用品業界の今 【リビングタイムス主催】2

2023 座談会・家庭用品業界の今

  鴻池良一・スケーター会長

マスク販売は雑貨専門店で

鴻池 スケーターにとってコロナ禍の襲来はリスクでもあったのですが、当時、マスクの調達は政府が動く事態にまで至ったのは記憶に新しいところです。

マスクの販売は通常、ドラッグストアなど医療系小売店ですが、キャラクターの付いた当社のそれは雑貨専門店系で、ほぼ独占的に販売されています。沈静化された現在でも売上の15%をマスクで占めています。

私は元来、新しいことに取り組むのが好きです。売り先の選定よりも先に作りたいものを作ってしまい、それによってピンチに遭遇するかもしれない。でも、新商品はこれまでとは違う小売店の開拓の実現する可能性もあります。数多くの商談の中、「ピンチをチャンスに変える」ことで乗り切ってきました。

 

メーカーと連係プレー必要

――22年、中山福の社長に就任されました。
橋本
 22年6月の社長就任の折、1つ目に「物流体制の強化」、2つ目に「卸売事業の拡充」、3つ目に「ものづくり事業の強化」、4つ目は「EC事業の拡大」を掲げました。

社長就任後、半年が過ぎようとしていますが、得意先からはベンダーの必要性や寄せる期待などをお聞き出来た。本日ご出席のメーカーの皆さんには、卸売業に何を期待しているのかをお話頂ければ有難い。

当社の卸売業にとって、商品を滞りなく消費者に届けるにはメーカーとの緊密な連係プレーが必要です。メーカーNB商品、当社自社ブランド商品、最終的には消費者が商品を選び購入されます。現在、取引しているメーカーの商品の優秀性は十分、承知しております。それらを踏まえて、品ぞろえの一環として自社ブランド商品もそろえていく。

より多様な商品と、卸売業としての視点や発想を加えながら、独自の提案活動をさせていただいています。

コロナ禍で、「巣ごもり需要」「在宅勤務・テレワーク・ウエブ会議」「SDGsを意識したビジネス・商品開発」が定着し、取り巻く環境は大きく変わりました。平時ならば年月をかけて変化していくものが、コロナ禍が一挙に変え、かつ定着しました。

奥村 間接部門では仕事の内容・やり方やシステム構築の工夫次第で働き方は変わっていくと思います。オクムラではコロナ禍前、取り組んできたシステムの開発導入が功を奏しています。

当社の得意先の企業規模は中小・中堅企業がほとんどで、オンラインでない受注形態も多く残っているので、こうした事情を踏まえた改革でないといけません。

一方、在宅勤務体制は何度か挑戦したが、定着していません。企業規模は小さいので、社内で、その場で話し合い、社員間の話し合いの中から改善案や情報交換が生まれています。まだまだ紙ベースの仕事ができています。オンライン在宅勤務の中でこなすのはかえって非効率になると考えています。

橋本 中山福でも人材不足・人手不足は大きな問題です。「パートタイマーに対しての曜日別賃金の導入」、「地域限定社員の採用」など、新しい採用・賃金体系なども部分的に導入しているところです。

猪又 人材難、人手不足は特に感じていません。

 

――円安・原料高など急速にひろがりました。
橋本
 この1年間で円安・原料高が急激に進みました。両者とも起こるべくして起こったものでしょうが、コロナ禍がスピードを加速させたと見ています。

猪又 素材価格が高騰しています。これに伴って大手素材メーカーは創業以来の利益を上げているようです。価格が上がった分は、そのまま川下のわれわれユーザーメーカーにしわ寄せられています。メーカーとして影響は大きく、われわれ関係者は苦しんでいるという状況が続いています。

コスト増に伴う製品価格の値上げがあります。22年春ごろから取引先に値上げのお願いしてきましたが、コスト増をそのまま上げるのでなく、上げ幅の半分は当社が被ります。価格転嫁は半分、あるいは3分の1にとどめて、製品値上げの協力をお願いしています。

そっくりそのまま上乗せするのは難しい。小売業もコスト増をまるまる上乗せすれは消費者に受け入れらないでしょう。
素材メーカーの値上げによってこんなふうに、川下のメーカーが大変苦しい思いを強いられる。大手素材メーカーは安泰でも、消費財などのメーカーは苦しんでいる。なんとも歯がゆい気持ちです。

ロシア・ウクライナ戦争も素材の価格を上げる要因になっています。

山中 現在、原材料高、円安などの問題が当社を直撃しています。電気製品やステンレス魔法瓶などは中国から輸入しています。これに物流経費増が加わり、3重苦です。

さらにそうしたコスト増の一方、市況は厳しく商品の価格転嫁が追いついていません。ようやく値上げを受け入れていただいているところですが、さらに円安が進み、値上げによる収益確保が無になってしまう。厳しい状況です。

 

値上げ下準備丹念に

髙木 21年春ごろから、原料など多岐にわたって仕入先から値上げ要請が続いたため、先行きを考慮して夏ごろから値上げの下準備に取り組みました。

何年か前に値上げを実施したことがありましたが、単純に値上げした場合には、新価格で納品しても集金の際には値上げ前の取り決め価格に値引き処理され、実質的には値上げになっていなかった。また、販売店によって値上げの実施時期に違いが出たりしました。

こうした反省から、今回の値上げでは、パッケージやJANコード・品番などを変更して値上げを含んだ新商品への入れ替え交渉を進めてきました。ほぼ全ての販売店様に商品の切り替えを受け入れていただけました。全ての値上げが終了したわけではなく、23年にも新商品への切り替えが必要なものもあります。

他社に比べると値上げ実施の進行状況は遅いかと思いますが、確実に着実に無理なく受け入れいただけるよう進めていきたいと思います。

 

――為替円安の影響は。
橋本
 輸入業務の関係でドル決済などもありますが、為替管理においての課題の整理や対策の検討にも取り組みました。

髙木 円安によるコストアップ分の値上げは、為替変動がある程度落ち着いた状況のもとで、交渉を進めたいと考えています。現在、輸入品については適正利益が確保できていない状況ですが、社内レートの設定が確定するまで我慢するしかないと考えています。

 

値上げずれ込む国産メーカー

奥村 物価高、原料高について、個人的にはマテリアル素材の国際価格は落ち着いてきたと受け止めています。為替の影響は大きいが、鉄鋼など素材メーカーが値上げし、そのために川中、川下のわれわれが右往左往している。この家庭用品業界も割を食っているようです。

国産のメーカーや部品・半製品メーカーも含めて中小工場が廃業倒産、後継者不足を理由に仕事が止まり、足踏みをしています。こうした理由から値上げされることもあります。2022年中に値上げが達成し切れていないメーカーもある。23年前半まで値上げは持ち越されるのでないでしょうか。

22年度、自社ブランドシリーズは動きを止めています。在庫も軽めにしています。特に季節家電メーカーの在庫状況は軽めのようです。

今回の円安ですが、部分的に仕入れ価格が正確につかめていないところがあります。為替相場の局面がある程度固定化しなければ新たな展開に打って出るのは難しい。末端での売価からの売上状況を正確に把握できるのは23年5月か、6月ごろになるのでしょう。

 

PB商品はメーカーの負担大

在庫かさむPB商品

PB商品より隙間型に特化

――NB商品とPB商品の話題に移ります。両者は二律背反なのでしょうか。
奥村
 オクムラは基本的にはNB商品の販売活動が主軸になります。自社開発品に販売を傾注するのでNB商品の売り上げ比率が減るということはありません。

猪又 イノマタ化学は基本的にはNB商品一本です。小売業のPB商品への要望は多いのですが、メーカーにとっては、二重在庫となり、その管理など、経費負担が大きい。

山中 ピーコック魔法瓶のPB商品の供給比率が高まっています。NB商品を売り込む際にも、PB商品を受け入る前提でないとNB商品を受け入れもらえないというのが現状です。

しかし、NB商品と同等に在庫管理が必要で、NB商品と同等の色・サイズなどの品ぞろえをしなければならず、そのため在庫負担が大きくなっています。

メーカーとしてはより一層NB商品の企画増強に力を入れなければいけないのですが、販売環境としては矛盾を抱えています。

髙木 ECとの価格競争を避けるとともに、競合他社との差別化を図るため、流通再編によってバイニングパワーを上げてPB化を進めていくのは自然の流れかと思います。

高木金属工業の商材は、販売店がPB化を進めるボリュームゾーンには入っていません。ニッチな市場が主たる売り場で、23年に発売を予定している商品も隙間市場向けとなっています。

奥村 京都市に本社があるオクムラでは自社開発の「京都活具」を販売していますが、得意先PB商品や囲い込み用のPB商品という位置付けでなく、当社が消費者にお勧めしたいモデルの商品を開発する位置付けです。
規模の小さい企業なので、メーカーの苦情や要望は代表者である私にも届きます。例えば、「もっと売ってほしい」などと。

基本的にはNB商品販売が主流です。メーカーのNB商品の完成度が高ければ高いほど、弊社も自社開発する必要がないので、メーカーには、より一層いい商品を作って頂きたいと思います。

猪又 中山福さんはPB商品・ベストコへ力を注がれています。これはメーカーの率直な見方でしょうかね。

見本市の会場ではわれわれメーカーは立ち入ることはできない展示区域があり、出展参加をしているのに…というメーカーの声もあります。

メーカーはその専門性のほかに、多彩でサービス精神のあるアイデアなど、これでもかと盛り込んで新製品を市場に送り出しています。自分たちの商品に自負を持っています。継続的に、安定的に途切れることなく、流通の皆さんに新商品を提供するという使命感も持ち合わせています。

第8波のコロナ禍ではあっても、一部で沈静化も見られ、今後、商談も活発化されることでしょう。これを契機に、われわれメーカーを中山福さんサイドにぐっと引き付けていただければと思います。取引メーカーの力を利用してください。メーカーにもっと元気を与えてもらえるようお願いします。

「中山福さんのためなら一肌脱ぎたい」「ともに繫栄したい」、という思い入れのあるメーカーの声としてお聞きいただければ嬉しいです。