2023 座談会・家庭用品業界の今 【リビングタイムス主催】1
【座談会】問屋・メーカーの代表者8人が語る家庭用品業界の2023年
ご出席の方々(発言順)
橋本謹也・中山福社長
猪又晶介・イノマタ化学
山中千佳・ピーコック魔法瓶工業社長
髙木満郎・高木金属工業社長
池永一雄・池永鉄工社長
髙垣克朗・八幡化成社長
奥村陽・オクムラ社長
鴻池良一・スケーター会長
(座談会は2022年11月30日、大阪市内のホテルで開催)
=== コロナ禍・値上げ・EC事業・海外市場 ===
コロナ感染禍は4年目を迎え、特需もなく、長引くロシア・ウクライナ戦争によって日本の隅々にまで及んでいる。食品値上げ、ガソリンや石油のほか、ガスや電気料金は今年初め一挙に高騰するもよう。こうした状況が家庭用品業界にどのような難題を引き起こしているのか。リビングタイムスでは2年ぶり、関連問屋とメーカーの代表者に集まっていただき座談会を開催した。テーマにのぼったのがコロナ禍での影響の事例、広範囲に及ぶ値上げの進捗具合、急伸するEC事業への進め方、円安が背中を押す海外市場開拓などだった。
――コロナが襲来して間もなく4年目に入ります。この間、皆さんのお会社ではどのように取り組まれてきたのでしょうか。
橋本謹也・中山福社長
橋本 この3年間で、さまざまな問題が一挙に浮き彫りなりましたが、今後の対策を考える上でいい経験になったと受け止めています。その間に失ったまま未だに戻ってきていないものがインバウンド需要です。
旅行者の入国制限が緩和されましたので、中国からの旅行客が戻ればインバウンド需要がある程度期待は出来ますが、以前のような商品が売れるかどうかは難しいところだと思います。
流通再編ではニトリが島忠を子会社化、伊藤忠がファミリーマートを子会社化、ドラッグストア業界ではマツキヨ・ココカラカンパニーの誕生、流通大手によるM&Aなどが進み、ますます競争が激化しています。
消費者のさらなる節約志向、選別消費も進んでいくでしょう。
中山福社内のIT部門ではコロナ禍での出社ができないことを想定し、在宅勤務でも倉庫オペレーション(受注発注業務)が可能な仕組みも整えました。
営業体制においても、伸びる業種や伸びる企業に対する経営資源の集中等、より卸売業務を深掘りしていきたい。
猪又晶介・イノマタ化学
猪又 イノマタ化学の販路は百均業界へは売り上げの60~65%を占めていますが、このほかの販路にもしっかり根差しています。百均業界ではその専門メーカーも多い中、当社は販路間口を広くしていくのが経営方針の一端です。
将来的にも経営の安定化を図るには販路の偏りはいけません。メーカーとして安定を図るには百均業界のほか、ホームセンターや問屋、SP関係、貿易など多岐にわたって商いを展開していく考えです。
原油高と樹脂原料など素材高の影響を受けています。コロナ感染の拡大が始まった2020年、当社は創業以来の売り上げがありました。当時は素材の価格は安定しており、為替は1ドル110円程度で推移していましたから収入利益ともに順調よく業績を上げることができました。
2021年、業績は少し落ちて、22年度は20年度の利益ベースに比べると半減しています。素材高をはじめ、これに伴うコスト増によって売り上げも足踏みしました。
山中千佳・ピーコック魔法瓶工業社長
新分野で間口拡大へ
山中 ピーコック魔法瓶ではステンレスボトルが売上高ベースで半分のシェアを占めていた20年度当時、突然にコロナ禍の影響を受けました。
たまたま19年度半ばから利益率の高い調理家電の比率を高めようと路線を変更し、ホットプレートを複数開発、発売した効果があり、その期の減収の見通しを補完することができました。
2015年は、私の社長就任のタイミングと重なったのですが、魔法瓶業界にとってインバウンド需要のピークでした。水筒などはコモディティ化し市場が飽和状態だったので、魔法瓶の保温・保冷性能を生かした別カテゴリーの新商品を開発し、これによって商品の間口を広げながら販路を拡げ業績を高めていきたいと考えていました。
魔法瓶は単に温度と水分を持ち運ぶ道具というあり方から、SDGsビジネスを含め新しい分野へ進めていくことにしました。
その観点から開発した「居酒屋」シリーズでは、社員たちのお酒の好きな人たちが中心になって商品企画を立ち上げたのですが、新しい商品に魔法瓶の性能を活かしただけでなく、これまでの単品投入から、売り場・棚割の一部を面でシェアできるよう関連品を複数展示していくという考え方をしました。
お酒を飲むシーンを細分化しそれぞれに合わせた提案となり、販促什器による視覚的効果とも相まって狙った通りの成果が出ました。
保冷できる氷嚢(ひょうのう)「アイスパック」も従来の保温・保冷技術を生かしながら、これまでとは違うシーンで役立てていただけるピーコック魔法瓶にとって新しい商品です。
コロナ禍が落ち着いても業界自体一層厳しく、今までと同じ商品を売っていたのでは立ちいかなくなることを痛切に感じていました。新しいカテゴリーの開拓、新しい売り場などへと切り込んでいける新商品を企画し、自社の経営資源を生かした商品を、力を込めて売り込み提案する。この魔法瓶技術を強みとした新しい展開を目指しました。
髙木満郎・高木金属工業社長
コロナ禍で行動パターン見直す
髙木 コロナ禍の影響で、未だに一部の通販やホームセンターでは、対面による商談や棚割に参加することができない得意先があります。
2020年は巣ごもり需要で業績を伸ばしたメーカーが多かったようですが、翌年21年はその反動で売上が下がり、結果的には需要を先食いしたような状況でした。
22年になって外食や旅行産業などは一部で回復してきていますが、食料品などの値上げが相次いだことにより、消費者の購買意欲が明らかに停滞しており、更に厳しさが増しているように思います。
コロナ禍の3年間は出張・会合などが激減し、時間の余裕ができました。それまで当たり前のように行っていた行動の中には無駄なものが多かったのではと、行動パターンを見直す良い機会になりました。
池永一雄・池永鉄工社長
コロナ禍で活動控えた
池永 業務用かき氷機メーカーの一面では、一年中、かき氷が食べられるという風習が定着してきました。ただ、コロナ禍では、かき氷機が登場するイベントは極端に少なくなり、ここ3年間、業績の大きな伸びは見られず、国内市場、海外市場とも同様でした。
コロナ禍では、特記される活動はできなかったものの、業績には深刻な変動も見られませんでした。事業も商材の拡大も模索しておりますが、取引先等に提案なども控えることになりました。このようなことは初めての経験でした。
池永鉄工では半導体などの電子部品等の入手・調達に苦慮することもありました。過去の経験踏襲では立ちいかず、部品などは早期発注をしないと手元に届く保障はありません。前倒しの発注タイミングと、ロット数も通常より多い目にといった状況でした。
ところが、こうした品薄状態とは真逆の現象もあって、予期せぬ時期に納品を頂き、仕入れが積み上がるといった状況も発生しました。
業務用かき氷機メーカーの特徴の一つに繁盛店と意見交換し商品開発に結び付ける。
お店に貢献できる商品を作り提供する事業も伴います。勿論そこには消費者の声も聞き取る行動も実行しております。
一方、南部鉄器は比較的余裕をもたれる客層を意識し、そういう方たちが楽しまれる鉄器の提案をしています。市場は国内、海外、リアル店舗、無店舗、百貨店、専門店など、販路の特色に沿う商品・提案をしています。
コロナ禍にもかかわらず、健全に商売ができたというのは貴重な体験でした。直接の面談を控えることが長く続いたため、対面による商談がいかに大切であると痛感しました。
髙垣克朗・八幡化成社長
「対面が大事」を痛感
髙垣 八幡化成ではコロナ禍の影響は、2020年3月、4月は業績に大きく響きました。22年は特にきつく、壁にぶつかったような衝撃をうけました。
当社が製造するものは生活の必需品とは言えないだけに、暮らし向きがある程度豊かでないと振り向かれることも少なくなります。22年の夏以降の受注状況から、こうした一面がうかがえました。
国内市場では、22年ゴールデンウイーク以降、政府のコロナ対応の緩和策があり、これを受けて当社でも営業活動を再開しました。やはり人と人が対面で話し合うことがいかに大事かということを感じました。商売の原点に立ち返れるにはいい機会でした。
奥村陽・オクムラ社長
リモートは人間関係築いてから
奥村 オクムラは京都市に本社を置いています。売り上げのもとになっていた市場がコロナ禍によって消滅し、多店舗展開していた販売店が賃貸を解約している店もあります。コロナ感染が沈静化すれば、失った市場は復活するのか、閉鎖した店舗は再開するのという疑問があります。「回復に時間がかかる」という法人もあります。
商談のリモート化は社内間でも、対販売先や仕入れ先と交換していますが、同時に、人と人とが直接対面し、話し合うことの重要さも大いに認識し直しました。リモート商談は便利だが、それ以前の人間関係が築かれていないとスムーズに進めにくい。
中規模の問屋ですから、人間関係がしっかり保てる間柄を築いてれば電話・リモートなどで、従来なら対面でやっていた商談もお互いにいい条件での商談も可能でした。
社内では社員同士が顔を突き合わせて話し合うと、それに触発されて、別の誰かがアイデアとして膨らませる。場を同じにする相乗効果が大きい。
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