2.3兆円 生活雑貨のEC市場規模 22年度
経産省調査 22年度市場規模
物販系分野の BtoC-EC 市場規模は、前年の 13 兆 2865億円から7132億円増加し、13 兆9997億円となった。増加率は5・37%であった。EC化率は 9・13%と前年より0・35 ポイント上昇した。
2020年、2021年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で同市場規模は拡大したが、22年の伸び率は鈍化しつつも増加する結果となった。
市場規模の大きい順に「食品、飲料、酒類」、「生活家電、AV機器、PC、周辺機器等」、「衣類・服装雑貨等」、「生活雑貨、家具、インテリア」、「書籍、映像・音楽ソフト」であった。このうち上位4カテゴリーが2兆円を突破した。これらの4カテゴリー合計で物販系分野の73%を占めている。
生活家電、AV機器、PC・周辺機器等
「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」分野における BtoC-ECの市場規模は2兆 5528億円となり、対前年比で3・84%の増加となった。EC化率は 42・01%であり、物販系の中でEC化率が高いカテゴリーの一つである。
総務省統計局家計調査によれば、2022年の1世帯当たりの「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」の年間平均支出は6万2305円となっており、21年の6万5053円17と比較すると減少したが、新型コロナウイルス感染症拡大前の2019年との比較では8・7%増加している。
22年は、前年より継続している新型コロナウイルス感染症拡大下での生活家電、PC・周辺機器への巣籠もり需要の一巡感や耐久消費財を中心とした販売価格上昇による需要減退などが影響し、対前年比では緩やかな伸び率となった模様である。
本カテゴリーのBtoC-EC 市場は、引き続きAmazon等の大手ECプラットフォーム事業者対大手家電量販店、通販事業者という市場の構図となっている。
生活家電、AV機器、PCといった製品は、財の性質上「探索財」に分類されるものである。食品やアパレルのような「経験財」とは異なり、製品の仕様が明確であるため事前の調査(探索)行為を通じて製品の内容や特徴を理解しやすい。従って、元来当カテゴリーの製品はECでの販売に親和性が高いと言える。
本カテゴリーはBtoC-EC の市場拡大と共に、実店舗の新たな役割が模索されてきたカテゴリーでもある。
大手家電量販店の中には、早い段階から消費者のショールーミング志向を逆手にとった戦略をとっているところがある。実店舗の電子棚札と ECサイトの価格をリアルタイムで連動させることにより、実店舗とECサイト上の販売価格の差をなくすとともに、後日配送でも差し支えない商品に関してはECサイトから購入を促す仕組みを導入する動きが見られる。
また、店内にWi-Fi環境を整備し、店内での商品撮影や SNS投稿を解禁し、むしろ ECに誘導することを歓迎する手法によってEC販売額を拡大させている例がある。
加えて、「物流力」がEC販売の明暗を分けるのも当カテゴリーの特徴である。受注後短時間での配送を実現するための配送網の整備と共に、近年大型の物流センターの整備を進めることでECの市場規模拡大を支えてきた一面がある。
近年広がりを見せているのが、家電ECにおけるリユース・リサイクル市場である。大手家電量販店などで家電を宅配回収し、リユース・リサイクル品の販売サービスを開始する事業者が増加している。背景には、半導体不足に起因する新品の家電不足や物価高騰の影響から、代替品としてリユース家電の需要が増加していることが推察される。
消費者のサステナビリティ意識の高まりが後押ししている面もあろう。
家電のリユース市場は小物家電を中心に取り扱いを開始する事業者が多いが、大型の白物家電を取扱うケースも増えており、今後本カテゴリー市場の拡大に寄与することが期待されている。
生活雑貨のEC化率30%
生活雑貨、家具、インテリア
本カテゴリーは、家事雑貨(食器台所用品等)、家事用消耗品(洗剤やティッシュ等)、一般家具、インテリア(カーテン等)、寝具類により構成される。2022年のBtoC-EC の市場規模は2兆3541 億円となり、対前年比で3・47%上昇した。EC化率は 29・59%である。
BtoC-ECの売上の内訳は、約7割が家事雑貨、家事用消耗品、残りの約3割が一般家具、インテリア、寝具類である。総務省調査によれば、新型コロナウイルス感染症拡大下において2022年の1 世帯あたりの「生活雑貨、家具、インテリア」の年間平均支出は8万1571円と、新型コロナウイルス感染症拡大前である2019年と比較すると6・1%増加した。
日用品や雑貨に関して、新型コロナウイルス感染症拡大の状況下では外出を控える行動により、普段使いの商品のストック需要の高まりと共にネットでの購入が増加したが、2022 年は需要が一服し伸び率は鈍化したものとみられる。
家事雑貨、家事用消耗品は取扱品目数が非常に多く、また個々の商品単価が安価であるため、販売側の立場では品揃えとコストとのバランスが課題と想定される。また、送料との見合いから単価の低い日用品のまとめ買いのニーズや、他の商品の購入に伴う「ついで買い」に支えられている面も強いと想定される。
近年、購入頻度の高い消耗品についてはサブスクリプションの利用が広がっており、EC市場規模拡大への寄与が期待される。また、食品分野でも新展開として注目されているクイックコマースが日用品分野でも取扱いが拡大しているという動きもあり、新たな需要の取込みに繋がる可能性がある。
家具やインテリア商品について、2022年は前年から継続している巣ごもり需要の一巡感や物価高騰の影響もあり市場規模の伸び率は緩やかになったと見られる。
家具やインテリア商品は、ものによっては物理的なサイズが大きいため、豊富なラインナップを取り揃えるには売り場や在庫の制約がある。また、各家庭のニーズに合わせてサイズや色に関して様々な取り揃えが求められるといった事情もある。
この点、ECサイトでは同じ商品の色違いやサイズ違いの掲載が可能となり、また家具類を利用した部屋のコーディネートもパターン別で紹介することができる。従って、家具やインテリア商品は EC 販売と相性の良いカテゴリーと言える。
また、拡張現実(AR)の技術を使い、家具やインテリア商品を自宅の部屋に置いたイメージをスマートフォンで確認できる機能を提供する事業者も増えている。この技術の活用により、購入前に実店舗で実物を確認したいといった需要が根強い家具やインテリア商品について、部屋の広さや雰囲気に適しているかを把握しやすくなり、ECでの購入の抵抗感を薄める一助となっている。
さらに、AIを活用しEC サイト上で消費者の好みに沿った商品を提案する技術も進化しており、従来のキーワード検索では辿り着けなかった商品の提案により、新たな需要の発掘が期待されている。