シャトルシェフで 黒豆ふっくら
お正月のおせち料理の定番「黒豆の煮物」真空保温調理器は簡単に、ふっくら味のしみ込んだ黒豆に仕上げる
日本人に不足している豆を失敗なく、手間なく仕上げる保温調理術
サーモス株式会社(本社:東京都港区、社長:樋田 章司)は、調理科学の専門家である佐藤秀美先生との共同研究第4弾として、当社のロングセラー商品「真空保温調理器シャトルシェフ」を使って、お正月のおせち料理の定番「黒豆の煮物」に関する「保温調理」特性について実験しました。
豆類は日本人が不足しているミネラルや食物繊維を豊富に含んでおり、生活習慣病の予防に役立つ健康食材です。ところが最近では手間がかかるため調理する機会が減っており、豆類の摂取量も、厚生労働省「健康日本21」で定める目標量に足りていない状況で、日本人の「豆離れ」が懸念されています。
今回は様々な加熱条件のもと、「黒豆の煮物」において保温調理にはどのような優位性があるのか検証しました。 その結果、以下のようなことがわかりましたのでご報告いたします。
<実験結果サマリー>
(1)豆は生活習慣病の予防に役立つ健康食材。しかし「メニューが思いつかない」、
「水で戻すのがめんどう」、「使い方がわからない」など豆離れが進む
(2)煮豆にできるシワは、加熱により豆の皮が伸び過ぎ、たるんでできる。
煮豆の“味のしみこみ”は、豆内部、豆と皮の間への煮汁の浸透がポイント
(3)保温調理器では豆が“ふっくら” 、皮にシワがない、ツヤのある黒い状態で仕上がる
(4)保温調理器は手間がかからず簡単に、味のしみ込んだ軟らかい豆を煮ることができる
(5)体にいい豆料理を、失敗いらず、手間いらず作れるのが保温調理器
<佐藤秀美先生考察>
皮にシワが無くふっくらした豆に煮上げるには長年の経験と技が必要で、昔から、シワを防ぐために、煮ている間に差し水(通称、びっくり水)をする等の工夫がなされてきました。けれども、本実験の結果から、保温調理器では差し水等の特別な工夫をしなくても、従来法や圧力鍋に比べ、皮にシワがなく、よく膨らんだ軟らかい豆に煮上がることがわかりました(結果3)。また、圧力鍋の場合は味のしみ込み感が薄く、保温調理器では従来法の普通鍋と味のしみ込み感は遜色ないことがわかりました(結果4)。
従来法では鍋を火にかけて数時間煮続けるため、煮こぼれなどを気にして台所にいなければなりませんが、保温調理中は火を使わなくても、ごく弱火でコトコト煮ている状態と同じなので、鍋に気をとられることはありません。豆を一晩水につけてふやかす手間を省きたいのなら、味をしみ込ませれば煮豆になる市販の水煮豆を利用するのも一策。味は煮汁温度の高い方がよくしみ込むので、高温を保てる保温調理器の得意な領域です。一度にたくさん煮て、小分けして冷凍保存すれば、いつでも煮豆が食べられます。
豆は種類を問わず、鉄やカルシウムなどのミネラルや食物繊維の良い供給源です。さらに大豆なら、様々な健康効果を示す成分の宝庫であることが、これまでに明らかになっています。毎日の食卓に豆料理を添えて、健康に大いに役立てたいですね。
佐藤秀美(さとう ひでみ) 学術博士(食物学)
横浜国立大学卒業後、企業で調理機器の研究開発に従事。その後、お茶の水女子大学大学院修士・博士課程を修了。学術博士。専門は食物学。大学で非常勤講師を務めるかたわら、専門学校を卒業し栄養士免許を取得。研究者と主婦の目線で料理や栄養を研究。
著書に『おいしさをつくる「熱」の科学』、『カラダと健康の疑問に答える、栄養「コツ」の科学』(いずれも柴田書店)など
(1)豆は生活習慣病の予防に役立つ健康食材。しかし「メニューが思いつかない」、 「水で戻すのがめんどう」、「使い方がわからない」など豆離れが進む
豆は日本人に不足しているミネラルや食物繊維を豊富に含み、生活習慣病の予防に大いに役立つ食材です。しかし最近では手間がかかるため、家庭で調理される機会が大幅に減っています。厚生労働省が進める「健康日本21」の豆の摂取目標量は1日100g以上に対して、実際には20歳以上の成人で59.8g(平成22年国民栄養調査)と約半分しか摂れていないという現状です[図表1]。20〜60代の520名の主婦を対象にした調査でも、「メニューが思いつかない」(34.4%)、「水で戻すのがめんどう(29.2%)、「使い方がわからない」(16.2%)という悩みを持っており、日本人の豆離れが深刻であることがわかりました[図表2]。
(2)煮豆にできるシワは、加熱により豆の皮が伸び過ぎ、たるんでできる。
煮豆の“味のしみこみ”は、豆内部、豆と皮の間への煮汁の浸透がポイント
そこで正月のおせち料理の定番食材である黒豆を、普通鍋、圧力鍋、保温調理器の3つの加熱方法で調理し、見た目、調理前後での膨潤率、硬さ、味のしみこみを比較しました。
それでは豆は加熱によって、どのように変化していくのでしょうか。
豆の皮は豆内部に比べて、加熱により伸びやすいのが特徴です。これは加熱された豆内部で発生する 水蒸気や、皮と豆の間に侵入した煮汁中の水分蒸発で発生する水蒸気の圧力で皮が押しひろげられること によって起こります。黒豆を煮た際にできるシワは、伸びすぎた皮が豆の表面でたるむことで生じるのです。
豆は主成分がたんぱく質なので膨潤しにくいですが、 加熱され豆内部が膨潤すると“ふっくら”、し同時に“軟らかく”なります。
豆の皮は比較的硬い外皮と軟らかい内皮(薄皮)の2層構造になっているため、加熱が進むと、豆自体が煮汁を吸って膨潤するとともに内皮も煮汁を吸って膨潤し、さらに外皮と内皮の間に煮汁がたまります。
豆内部、豆と皮の間への煮汁の浸透と二つの要素が揃うと、“味のしみ込み”が良いと感じられることがわかりました。
(3)保温調理器では、豆が“ふっくら”、皮にシワがよらないツヤのある黒い状態で仕上がる
まずはじめに3つの加熱方法で、調理終了時点の豆の見た目を比較しました。保温調理器では、豆が“ふっくら”仕上がっており、皮に“シワがよらない”状態で仕上がることがわかりました[図表5]。
圧力鍋では鍋内が約120℃の高温になり、豆内部で急激に成長した水蒸気が皮を押し広げるため、シワが生じやすくなります。保温調理器では、鍋でコトコト煮るよりも煮汁温度が若干低いので、豆内部での水蒸気の成長が抑えられ、シワが生じにくいのです。また豆の色も黒くつややかに仕上がっています。これは皮の色はアントシアン系色素で水に溶けやすいため、普通鍋では高温長時間で、圧力鍋ではさらに高温にさらされて、色素が流出しやすく退色してしまいますが、保温調理器は比較的温度が低いため、黒色を維持しやすいのです。次に調理前後での黒豆の膨潤率を比較すると、保温調理器では、豆自体がよく膨らんでいることがわかりました[図表6]。
(4)保温調理器は手間がかからず簡単に、味のしみ込んだ軟らかい豆を煮ることができる
さらに黒豆の皮の硬さを比較したところ、圧力鍋が最も軟らかく仕上がりますが、歯で豆を噛んだ時に豆がどれだけ変形したかを表す「破断歪み率」でみると、保温調理器が一番軟らかく、食感は保温調理器が他の調理法よりも、かなり軟らかいことがわかりました[図表7]。
次に豆に“味がよくしみ込んでいる” と感じさせる 1)豆の組織に浸透した糖量と2)皮に含まれる煮汁量を比較しました。圧力鍋の場合は 1)と2)がともに少ないため、味のしみ込み感が薄く、保温調理器では従来法より 2)が若干少ないものの 1)が同程度であるため、味のしみ込み感は長時間コトコト煮た普通鍋と遜色ないことがわかりました[図表8、9]。
つまり保温調理器は手間がかからず簡単に、味のしみ込んだ軟らかい豆を煮ることができるのです。
(5)体にいい豆料理を、失敗いらず、手間いらずで作れるのが保温調理器
以上の結果から、保温調理器では、他の加熱法に比べて豆が“ふっくら” “シワがよらない”“ツヤのある黒い”状態で、煮ることができることがわかりました。また数時間コトコト煮るという従来法に比べて、手間が格段にかからず、“味のしみ込み”は遜色なく、軟らかく、ムラなく、煮上がります。保温調理器は「味のしみこみ」「軟らかさ」の点で、他の調理法に比べても優位性があることも確認できました。
つまり保温調理器の大きな利点の一つは、沸騰後豆を20分煮た後2時間保温し、再度10分煮た後に2時間保温する、という手軽な調理法で、豆を簡単に調理できることです[図表3]。しかも見た目もきれいに失敗なく仕上げる保温調理器は、初心者の方でも簡単に豆を煮ることができます。今年の年末は黒豆の煮物づくりにチャレンジしてみて、健康な1年をスタートしてはいかがでしょうか。
●実験概要●
◇実験場所:佐藤秀美先生自宅
◇実験期間:2012年11月〜2013年1月
◇実験目的:黒豆の “味のしみ込み”、“シワがよらずにふっくら” “軟らかい”
“調理の手間”に対する保温調理器の優位性を検討
◇比較対象鍋(加熱機器:IHコンロ)
1)真空保温調理器(「シャトルシェフ」)
2)普通鍋(「シャトルシェフ」の調理鍋)
3)圧力鍋(熱源:電気)
◇試料:黒豆(北海道産) 300g
煮汁(水1000g、砂糖250g、塩6g)、糖度Brix27.8%
◇加熱法概要:1.黒豆と水1000gを鍋に入れ、10時間浸漬。
2.1に調味料を加え、落し蓋(キッチンペーパー)をして加熱。
→加熱終了時点の糖度を27%に調整。
◇測定項目
:1)温度:DATA COLLECTOR(安立計器、AM-7002)
2)糖分:ポケット糖度計(アタゴ、 PAL-1)
3)硬さ:クリープメーター(山電、レオナ―2 RE2-33006B)
4)外観等の観察(写真)
【真空保温調理器「シャトルシェフ」について】 商品HP:http://www.thermos.jp/product/cooker/shuttlechef/index.html
真空保温調理器は、「調理鍋」と、それを保温する「保温容器」の2つで1セットという構成です。保温容器は、魔法びんと同じ高真空断熱構造のため、熱を外に逃がしません。よって、調理鍋で料理の材料を沸騰後、その調理鍋を保温容器に入れることで、余熱で調理ができます。保温調理とは、短時間火にかけた後に保温して、余熱を利用して食材に火を通す調理方法です。