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2024年01月01日

座談会 メーカーが語る「物づくりの大事」 2024年 ❸

座談会 メーカーが語る「物づくりの大事」 2024年 ❸

 

ここにこだわり
ものづくり 6経営者

藤田盛 藤田金属では現在、商品開発の主軸はお客さんの声をヒントに商品化しています。お客さんが困っていること、欲しいと感じているものを商品化していくのですから、売れる確率が高い。失敗事例は少ない。手っ取り早い商品開発の手法です。

メーカーの視点、発想では思いつかないニーズや具体的なアイデア、意見が届きます。お客さんから言われなければ私たちには気付かないことが多くあります。

最新事例は小径の鍋。「このサイズで売れるのか」と心配するほど小径の鍋です。

藤田清 マルカは、メールアドレスにyutanpoとあるように、湯たんぽ市場は他社に負けるわけにはいきません。全力を注います。湯たんぽ市場で一番企業になるしかない。市場シェアを拡大するよりも、守るという意識が強い。

土井さんとは市場を共有していますが、健全な意味、情報交流をさせていただきたいと考えています。

23年夏、冷やす湯たんぽを試作したけど、商品化には至っていません。氷塊を入れる口部が小さく、家庭用の冷蔵庫で冷却するにも嵩高(かさだか)で、ほかの食品を保存収納することができない。

湯たんぽには製品安全協会が実用と安全を念頭に作り込んだ基準で、SGマークが添付されていなければ、ただの金属容器です。したがって冬場、直火にかけることはできず、湯たんぽとして使うことはできません。

田中 田中文金属は、創業者である曽祖父の「よそさんと同じものをつくったらだめ」という言葉を大事にしています。もともとは「ものづくりする者同士、仲良くしなさい」という意味だと思うのですが、その言葉を守りつづけて培ったオリジナリティーこそが現在の弊社の生命線となっています。

当社は7年前からアウトドア分野に進出してきました。他にないものを作るので製品化には試行錯誤を繰り返しての苦労が絶えません。でも類似品のない製品だからこそ、今も販売できていると確信しています。

とはいえニーズの移り変わりの早いアウトドア分野では、新製品の開発に追われています。23年秋に2アイテムを発売しました。24年春の新製品の試作中ですが、頭の中ではその次に何を作ろうかでいっぱいです。

湯たんぽのように、息の長い製品を持っているマルカさんをうらやましくお手本にしています。弊社の製品の中から、何十年にもわたって愛される、そんな製品を作り上げ育てていければと思います。

池永 鉄鋳物、ステンレスなど、池永鉄工は他社でやっていないものや小さなニーズに向けたものに力を注いでいます。類似商品なら価格や営業力、機動力などで大手メーカーに負けてしまうこともあるでしょう。だからこそ独自の物づくりへの視点を大切にしていきたい。

お客さんの声に耳を傾ける一方、全従業員に参加してもらい、「あったらうれしい商品」を募った。アイデアが集まり、今、商品化を進めているところです。

部署が違うと同じ従業員であっても問題意識や感性は違い、多様な意見もユニークな視点、思いもつかないような発想が集まった。従業員のセンスに感動したのが収穫でした。

もう1つは若い女性従業員を中心に「当社の生産ラインに乗せられるもの」「自分の欲しいもの」「売ってみたいもの」の商品化を進めています。

土井 土井金属化成は、「より良いものをより安くの追求」、これ一本です。代表的なのはブリキやトタンのバケツ、たらい、万能しゃく(杓)など、同業他社が製造を止めたり、市場で勝ち残った商品です。ほぼ独占的状態です。

これらの商品は半世紀以上前から使い続けている製造機械で作っています。代替機はありません。熟練の職人たちが修理をしながら作っているという状況です。こうした状況ですから、商品の精度や品質を落とさず、効率的にいかに作っていくかが第一義です。新製品の開発に力を注ぐ余力はありません。

湯たんぽを事例に上げると、採算に見合うような金属プレスの技術は他社には持ち合わせていない。安定した価格を維持してられるのは、当社も、同業のマルカさんもそれぞれに完成された技術ノウハウの蓄積があるからです。一朝一夕に他社が参入もできない分野と言えます。

竹原 竹原製缶は価格と品質を突き詰めると同時に、今求められている商品とは何かを模索しています。お客さんの声を聞くことは比較的安定して実績を積むことができます。しかし、そうした商品はあまり特長が感じられない事もありました。今、大事なのは自分たちが「よっしゃ! これでいこう」とこだわりの持てる商品を作っていくことです。

振り返ってみて実績を積み重ねてきた商品とは、幅広く多様な意見を取り入れたタイプではなく、前評判では少々辛口の批評を受けたけど、結果をみれば、主力級の貢献度があったといった商品は少なくなかった。

今後、量的な貢献度を見込める商品は軽視できませんが、これに終始するだけでなく、自分たちが「これだ」と売り込める商品もどしどし作っていきたい。

社長就任から10年が経ちました。それまでは中国製の比率が高かったのですが、徐々に国産へと比重を移し替えていきました。従前の路線にこだわっていたのであれば社長の席になかったかもしれません。
(座談会 終わり)