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2024年02月04日

【座談会】2024年を語る 家庭用品業界7人 ①

コロナ沈静化を受けて日本全体が動き始めた。
関連業界ではどう動いているのか。
販路はどう変化していくのか。
原材料高と物価の高止まり中、
価格転嫁はどこまで進んだのか。
物流問題は。
インバウンド需要は。
海外市場進出は。

今年の見通しについてメーカー6社と
問屋1社のトップ人が語り合った。
(座談会は2024年1月18日、大阪市内のホテルで開催)

ご出席の方々(発言順)
橋本謹也・中山福社長
猪又晶介・イノマタ化学社長
山中千佳・ピーコック魔法瓶工業社長
楠本雄大・シンコハンガー社長
池永一雄・池永鉄工社長
髙木満郎・高木金属工業社長
鴻池良一・スケーター会長

 

【コロナ前後・景況感】
橋本 2023年5月、感染症法の位置付けが5類へ変更になり、コロナ禍は一応終了したと言えます。このため、消費活動は回復に向かい、外出への抵抗感も薄れ、中遠距離の旅行も見られようになりました。中国からの観光客が足踏み状態ですが、その他地域からのインバウンド需要はコロナ禍前の水準を取り戻しました。


橋本 しかし、中山福を含む関連業界では、さほどいい状況にあるとは言えません。原材料高が止まり、為替は円が高い水準で推移し、また身近なところでは物流コストが上がり、これに伴い商品価格が上昇し、そうした状況が続いているところです。

景気の状況は業界によって受け止めて方は違うでしょうが、当社が属するマーケット環境・消費環境は厳しい状態が続いていると言わざるを得ません。

中山福が範疇とする市場は、消費環境は厳しい。消費者の生活防衛意識の高まり、一層の節約志向や選別志向の傾向が強まっており、個人消費を押し下げる構図が続いており、去年から引き継いで消費の回復は道半ばと言えるでしょう。

 


猪又 コロナ感染が始まった2020年、家庭用品業界は活況を呈し、イノマタ化学も1978年の創業以来の好業績となりました。コロナ特需ですね。消費者の仕事は在宅勤務が増え、自宅にいる時間が一挙に増えたことから家庭用品が非常に売れました。

コロナ禍の沈静化に伴い、消費活動も徐々に落ち着きを戻し、23年には業績はコロナ以前の状況に戻きました。

 


山中 コロナの期間中、消費者の行動スタイルが変わり、魔法瓶の販売は激減しました。今では、売り上げは回復基調にありますが、2019年のコロナ禍以前と同じ状況でもなく、大容量のボトルの売れ行きがシーズン問わず伸びている印象です。

スポーツクラブの流行など、アクティブユーザーが増えているのではないかと推測しています。

コロナ禍では調理家電、電気プレートが売り上げを伸ばしました。でも参入メーカーが多く、すでに競争激化のアイテムとなっています。

 

楠本 シンコハンガーでは2022年中盤より電気代、原材料、副資材、運賃等諸々の値上がりが本格化し、また円安の影響も受け、23年は以前に増して苦しい経営環境を強いられる1年となりました。

その様相が浮き彫りになった22年より従前からの当たり前を見直し、原価、諸経費の圧縮をして乗り越えている状況です。

コロナがパンデミックを引き起こした2020年より国を挙げての金融緩和の強化、各種助成金、補助金も拡充され、一時的な止血とコロナ対策、コロナ後に向けた投資が実行しやすい環境下であったかと思います。

2023年5月にコロナが5類に分類されて以後、やはり以前のように「どんどん貸し付けを」といった金融環境から引き締めを行っている印象もあり、企業としてコロナ禍中にどのような成長戦略を描き実行できたか、真価が問われると受け止めています。


池永 コロナ禍の影響は消費の方向性が変わってきたことが認められます。特に海外の方の消費に変化が生まれました。

 


髙木 高木金属工業では、営業活動は8割方戻ったように受け止めていますが、活動の中身は多少変化した状態が続いていると思います。

2020年にはコロナ特需があり、油まわり商品が飛ぶように売れ、弊社に限らず天ぷら鍋やオイルポットなどを扱っているメーカーの在庫が底を突く状況でしたが、翌年にはその反動が来ました。2~3年のスパンで見ると従来の売り上げと変わらなかったと言えます。

 


鴻池 スケーターはキャラクターを中心とした雑貨関連商品のメーカーです。箸・はし箱、弁当箱、キッチン小物調理用品、保存容器、水筒などを主に販売しており、分野は次第に広がり、現状20前後のカテゴリーを扱っています。年商は160億円。

当社の事業形態は自社で商品を製造しないアウトソーシング。当社で商品企画し、製造はすべて協力工場です。国内工場は30社。海外では50~60社。私をはじめ、当社社員が大挙して海外出張し、コロナ禍以前では毎月10日間程度の日程でした。

サンリオ、ディズニーなど、毎年800品目を展開し、売上高構成比はおよそ60%。キャラクターは、同業他社ではかつてほど重視されなくなりましたね。

販路は家庭用品業界から徐々に雑貨用品業界へと変わっていきました。弁当箱やステンレスボトルの多くを販売していますが、最近では雑貨品全般に広がってきました。弁当箱、キッチン用品、調理用品、保存容器などは国内生産が50%前後です。

コロナ感染がピークのころ、マスクは28億円売り上げましたが、現在、10億円程度で落ち着きました。単品アイテムで18億円減ったのですが、落ち込みは何とか他の分野で埋め合わせています。
(【座談会】2024年を語る 家庭用品業界7人 ②に続く)