【インタビュー】 商品を進化させる 中條啓一郎・サーモス社長

中條啓一郎社長
しなやかなビジネススタイル
チャネル拡大が大事
――サーモスを取り巻く環境は。
中條 海外旅行客の爆買いが止んで一昨年から携帯ボトルなどの販売量が減り、ピーク時の10%減に落ち着いています。これは中国国内で転売する業者の需要分は減ったが、旅行客の需要は堅調です。
国内需要は価格がシビアで、付加価値の高いものを提供していかなくてはいけない。商品を進化させることが大事です。
異業種の参入も目立ちます。比較的穏やかだったまほうびん業界に楔(くさび)が打ち込まれた感じです。厳しいですが、業界の活性化にもつながります。方向性の見極めが大事です。
――まほうびん業界の中ではさきがけの一面も。
中條 大陽日酸(旧・日本酸素)での魔法瓶事業のスタートは1978年。「世の中にない。皆が喜ぶ商品を世に送り出す」という当時の考えは現在にも引き継がれています。1人1人違ったライフスタイル、いろいろな生活シーンの中で一番使いやすい製品を探っていくという姿勢です。
保冷専用ボトルはコップに移し替えて飲むより、ペットボトルのようにすぐに飲みたいというニーズに向けて商品化しました。
保温力で調理する「シャトルシェフ」、米国のランチスタイルを日本に提案したスープジャー、ケータイマグなどもあります。
他社とほぼ同時販売でも、店頭販促など仕掛けには力を入れてきました。市場になかった商品は売り場の棚割に入っているだけでは消費者は気付かない。シーズンの初期段階で販売店に仕掛けるのがサーモスの得意とするところです。
――そうした考えを反映した最新の商品は。
中條 今年2月発売の自転車専用ボトルは視線を前方にしたままストローで飲める商品です。真空二重構造で保冷された飲料で身体を冷やします。ターゲットを明確にした商品です。
「職人専用」シリーズは建設現場プロ向けた保冷ボトル、ジャグ、スープジャー。「高い上階での作業場での水分補給に欲しい」として要望が上がっていました。販路は資材調達ルートなどで、2020年のオリンピックに向けて建設ラッシュが追い風です。
――4月1日付でケトルメーカーのクックベッセルの一部事業を譲り受けした。
中條 ケトルとまほうびんは沸かす・保温という近い関係です。百貨店の定番品として相乗効果を期待しています。傘下のドイツのまほうびんメーカー「アルフィ」も念頭にあり、法人ギフトなど、次の時代に準備をしています。
ネット販売が目立つ中、チャネルを広げることは非常に大事です。店頭での展開にも視点を広げ、新しい用途を提案し続けていきます。
――二子玉川ライズ・ショッピングセンターに直営店が開店しました。
中條 当社の日本初の直営店です。立地は東京都世田谷区や横浜市、川崎市の情報感度の高い30歳代~40歳代の女性たちが多い場所です。そうしたお客様にサーモスの商品に触れてもらい、情報交換で次の新しい商品のヒントになるものを得たいと考えています。
サーモス株式会社
http://www.thermos.jp/
サーモスオンラインショップ
https://www.shopthermos.jp/?_ga=1.64684972.2021082975.1433314148