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2019年06月14日

佐多茂範・アクロス社長 インタビュー


 佐多茂範・アクロス社長

 

OEMビジネスの勧め
アクロス(大阪市)は鍋・フライパンなど、家庭用調理器物のOEMメーカー。GMS、ホームセンター、ホームファッション専門大店などとの共同開発品が各社のブランドとして販売されている。OEMビジネスを展開する上で、海外工場など、流通関係者がチェックすべきポイントなどについてこの分野で長年携わってきた同社の佐多茂範社長に聞いた。

 

――OEM製品の一般的な生産拠点は。
佐多
 日本へ供給されていえるOEM生産国は中国、韓国、ヴェトナムなど周辺のアジア地域、さらにドイツやイタリアなどがあります。

米中貿易戦争の影響を受けている中国は、「現地の工場数は半分に減ってしまうのでは」と懸念する同国の工場関係者ですが、生き残りをかけて必死です。中国製品だからといって、値段だけが争点とは言い切れません。

主に百貨店などで販売されているドイツ製品やイタリア製品は現地の商品がそのまま日本でも売られている事例がほとんどで、OEMというより、輸入品と呼ぶのが正確です。

 

――OEMビジネスを展開する上で、どこに着眼すれば。
佐多
 OEMビジネスに取り組む際、3つのポイントがあります。大事なことはメーカー選定です。どのメーカーがどんな施設を保有し、どのような商品作りが得意なのかを知る。実績はどうであったかなどの情報収集です。

2つ目はOEMを発注する流通側の意図は何か。どんな商品を作り、販売したいのか。そうした考えを製品化できるメーカーはどこなのかを選ぶ。3つ目に他社にない独自性をどう企画し、商品化するのか。

 

――アクロスが得意とするところは。
佐多
 当社は中国のほか、ドイツやイタリアなど、歴史や実績を誇る生産工場と取引関係にあります。その設備を活用し、日本市場に最適化したOEMビジネスを提供しています。

当社のOEMの発注元は主にGMS、ホームセンターやホームファッションの専門大店です。

 

――金属へら試験200万回クリアのフライパンが看板商品です。
佐多
 当時、磨耗テストは20万回、50万回が一般的でしたが、「業界の中でのインパクト」を放ちたかった。流通大手企業とフッ素樹脂メーカー、当社の3者で「業界の中で最高のフライパンを作ろう。お客の目に触れない部分にも工夫を凝らし、使いやすさや耐久性を追求していこう」という共通の目標を立てました。

下地は硬質アルマイトで、密着性を高めると同時に、ステンレスの2倍の硬さの強靭なフライパン。

取り組みから2年後の2016年、商品化し、今に至っています。

 

――フライパン以外では。
佐多
 ある批評誌の比較テストで、当社の3層鋼片手鍋が、「熱いフタに指が触れにくい位置・高さに設計」「蒸気を逃す穴がある」「比較商品に比べて価格が安い」など、評価でした。

 

――売り場は今後、どのように変ると考えています。
佐多
 現状は価格帯別に4つの階層がありますが、今後の売り場は価格から「用途別」「機能別」「材料別」の提案がなされていくと考えます。

材料ごとに特徴のある商品を提案していきたい。アルミ製鍋・フライパンは軽量・堅牢・耐久性など、非常に優れているのは万人が認めるところですが、最近、鉄製の関心が高まってます。熱伝導はアルミに譲るものの鉄製鍋・フライパンは熱をしっかり保つことから、肉料理用のツールを考えています。

銅は熱伝導と抗菌に優れており、アルミやステンレスと組み合わせた商品化が有望です。2層や3層の多層鋼は煮込み用として掘り起こしができます。

 

――流通関係者へ呼び掛けとして。
佐多
 メーカー姿勢として「他社製品とは違う、特徴あるもの作り」を長年、堅持してきました。今後も強くこだわり、前面に押し出して生きます。

価格を重視する需要は一定規模で存在しますが、これ以外の需要、客層の掘り起こしにも活路を見出したい。他社にない独自性で消費者の関心をそそる。ビジネスの幅を広げ、厚みを持たせた商品で成功をつかみ取ってほしいものです。

取引先のフッ素樹脂メーカー、海外工場もネームバリュー知名度は今一歩ですが、品質や独創を作り出す施設や生産能力はトップ企業に並びます。ビジネス環境を今一度点検していただき、評価のリセットをお願いしたい。

株式会社アクロス
大阪市中央区南船場2-6-3 第2BSビルディング602

 

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