❹ 座談会 家庭用品業界の今 問屋・メーカー代表者8人
ファブレスメーカーの狙い
鴻池 現在、工場を持たないメーカー、ファブレスメーカーです。消費者の生活を見つめて、そこから想像できる新しい感動、喜びなどを探っていく。感性を商品化していく手法はファブレスメーカーであるからこそ有利に展開できました。
商品開発を長く担ってきた私は「今、欲しがっているもの」「喜ばれるものは何か」。ここに多くの力を注いできました。自社の立ち位置を固定化させず、得意先の要望にはYESがあってもNOはなかった。どんどん新規分野を取り込んでいきました。カテゴリーの拡大をメーカーとして止まらずに前に進めました。この姿勢は評価されたのでしょう。現在、当社のカテゴリーは25~26に分類できるできます。
加えて、「いいものをつくろう」というキーワードもあり、「売価最優先」には考えていません。成長戦略の核となるのは商品開発とカテゴリーの拡大です。
引き続き積極的にキャラクターライセンスを取得していきます。
池永 常に市場の変化、欲しがっているものを十分に意識した商品を提供していかないと売上確保は難しい。販路もたえず開拓をしていかないと経営も厳しくなっていくでしょう。
コロナ禍が解消され、企業活動に制限が外れました。商品開発には積極的に投資し、営業をすることが大事です。池永鉄工は営業力の強化、幹部社員の育成に重点を置きます。
女性社員の意見を参考に
山中 女性ユーザーが多いため、商品開発時には女性社員の意見を参考にしています。また、円安の影響を受け、北米市場や中東、アジア市場への販路拡大を進めており、それぞれの地域に根ざした商品ラインアップやマーケティングの強化を図ります。ECショップも順調に運営され、独自性を強化しつつ、更なる成長を目指します。
岩﨑 5年前から、医療分野で商品化に取り組んできました。プラスチック素材と岩崎工業の技術の優位性を活かした医療器具の素材転換を図る狙いです。2024年1月発生の能登半島地震の際、医療関連施設も被災し、洗浄滅菌ができなくなった。ここに当社の単回使用の医療関連品が採用されました。
商品価格の設定はコスト高の積み上げによるものと、価値の捉え方や関連商品群のセットアップなどがあります。後者に意識した物づくりを大事にしています。プラスチックは素材の進歩がすごくて日進月歩に乗じた戦略をとっていきたい。
高垣 プラスチック原材料価格は依然、高値で推移し、減産見通しのニュースも報道されています。プラスチックのごみ問題の報道も性悪説が基調のようにも思えますが、それは廃棄(捨て方)など個人モラルの問題です。プラスチックはリサイクルによって再生できる特性があり、環境問題の中、非常に優れた原料であると言えます。
プラスチック原料は中国をはじめ、東南アジアやトルコなどでも多く消費される中、最近は中東から材料の紹介が多くあります。
為替懸念より自力勝負で
【海外市場】
廣野 ベトナムやインドネシア市場を注視している小売店数社から、アセアン地域への販売強化や「チャイナリスク」を考慮した現地生産のPB商品について引き合いをいただいています。
2年前から、インドネシアで天馬独自の通販サイトを立ち上げました。現地の日本法人の量販店やホームセンターとの取引もあります。現地生産の当社商品は価格面で十分競争力がありますが、日本からの輸入品については売価が高くなり、販売数量が思うように伸びていません。
中国では1995年ごろから営業を始め、市場を獲得してきましたが、直近の2~3年はリアル店舗の業績が落ち込んでいます。
天馬としてはEC販売に力を入れており、2024年からECサイトを総代理店制度から自社運営に変更しました。自社運営に伴うコスト増はありますが、中国市場のECサイトそのものの強化と確立に取り組んでいきます。
ベトナムとタイでは収納ケースや衣装ケースの市場性の可能性があるというマーケティング調査に基づき、ベトナムのホーチミンで自社製品の製造に取り掛かります。ECサイトを立ち上げる計画です。
鴻池 海外市場では中国、韓国、香港のほか、米国市場も念頭に置いており、徐々にではありますが、丁寧なモノづくりという評価を勝ち得ながら展開をしています。
スケーターの製造の拠点は国内のほか、中国にも置いています。
岩﨑 為替の変動による儲けの副次的な問題であって、私たちは、「1ドルは1ドルの価値」として受け止めて、安定供給を念頭に置いてきました。円建て取引の多い東南アジアの取引先では、今日の円安メリットは円建てのお客様が恩恵を受けています。中国を除き、インドネシア、フィリピン、ベトナム東南アジアへは直取引が増えており、関税などの問題があるインドは次の課題です。
池永 海外展開は必須事項です。数年前から、市場を海外に求めていかなければと考えてきました。海外ビジネスには長期的な視野でのパートナーとの連係は必須条件です。国内市場で人口は増えません。生活者の所得も飛躍的な増額は望めない。豊かさを感じる人も少なくなるでしょう。
成形メーカー初の資源循環型工場
【環境問題取り組み】
廣野 投資家向け説明会で最も多く質問を受けたのは、環境問題への取り組みについてです。プラスチック製品メーカーである天馬として、今後の姿勢を問われました。最近のIR活動でも、このような質問が多く寄せられる傾向にあります。環境問題に取り組むため、3年前にサステナビリティ推進室を発足させました。
2024年、千葉県野田工場にリサイクルセンターを立ち上げました。この施設は、自社工場内で発生したプラスチック廃棄物をペレット化し、成型品として再利用する資源循環型の施設です。環境省と経産省の認可を受け、国内プラスチック成型メーカーとして初めてプラ新法の大臣認定を取得しました。
一方、小売店でも環境問題への取り組みが課題となっています。3~4年前からバイオマス原料を使った商品が商品化されていますが、売価が高く、店頭では思うように売れていないのが実情です。バイオマス原料を使った製品開発はメーカーにとっても課題の一つです。
環境問題は小売店にとっても避けて通れない問題です。再生原料を使うメーカーの一社として、製販共通の問題として取り組む姿勢をアピールしていきたいと考えています。
環境問題に関連して、小売店からのもう一つのニーズは、使い古されたプラスチック製品を小売店が回収し、その回収された商品をリサイクル材に戻し、リサイクル商品として販売するという仕組みです。多くの小売店からオファーをいただいておりますが、回収に伴う運賃コストをどのように負担するかがネックとなり、なかなか進展していません。
それでも回収・再生化への糸口を探りながら、関係企業間の情報交換を続けています。これは、最終的には業界全体の取り組みとして、サーキュラーエコノミーの実現を目指しています。
認知度アップ、業界共通の課題
【人材リクルート】
中沢 人材募集では、私たち中小企業への応募は厳しい。電響社グループ会社内で人材の適材適所を進めていくことになります。
廣野 従業員にとって働きやすい職場環境を作ることは、天馬の重点課題の一つです。例えば、2023年に女性活躍機会拡大ワーキンググループを発足し、多様な人材が意欲と誇りを持って働ける環境づくりに取り組んでいます。また、自動化の推進も今以上に必要だと考えています。
24年から、企業認知度を引き上げる方向性に打ち出しています。当社だけでなく、日用品業界全体の共通課題として取り組むことも重要です。例えば、ホームセンターの家庭用品売り場に商品を供給しているメーカーの企業認知度が上がれば、職場への印象も向上するでしょう。
さまざまな会社と協業できる機会があれば、業界全体にとってもプラスになると思うので、前向きに検討していきたいと考えています。
高垣 2022年、生産量の引き上げるため、八幡化成は成型機を新増設したところ、生産性が高まり、その結果、残業の必要がなくなった。定時就業、残業なしという職場は従業員にとって働きやすく、地元では職場しての魅力度が引き上がっているようです。
2025年、60周年を迎えることから、福利厚生面の充実化にも取り組み会社の魅力度を高めていき、企業の好感度を高めていきたい。
岩﨑 3年、4年前から、岩崎工業は新卒定期採用をしています。現場・工場要員の採用には地元の高校と大学が対象です。三重県の松阪工場は中学校生の社外見学のコースに指定されています。工業団地内で排出収集したプラスチックごみをペレットに加工し、ゴミ箱に成形などが一例です。リクルート活動は、入社歴の若い従業員のグループで兼務担当しています。
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