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2020年01月18日

池永一雄・池永鉄工社長 【インタビュー】


   池永一雄・池永鉄工社長

80周年で意を決したこと
池永鉄工(大阪市東成区)が80周年を迎えた。鉄器をはじめ、ブームとなったかき氷の氷削機メーカーとして、長寿企業として何に向かおうとしているのか。池永一雄社長に聞いた。

――惣菜市場が堅調です。
池永
 メニューの1つ2つに加えられ、惣菜市場は9年連続で伸びています。家事の手間を省いたり、季節感やぜい沢・非日常性なども満たしながら成長しているようです。

鉄器メーカーとして料理を自分で作る楽しさ、家族の喜びを実感するという達成感などに訴えかけることも大事です。世代の違いや流行などによってアプローチは幾分違いがいますが、こうした提案は1つや2ではないはず。

――具体的に。
池永
 料理教室の講師・先生らと共同で商品開発するのがこれまでの手法の1つでした。さらに生徒を参加してもらうことで調理する場面・イメージが広がるでしょう。

――EC販路をはじめ、小売業態が多様です。
池永
 リアル店舗でも通販であっても、「誰がどのように使っているのか」「道具として満足しているか」「何が不満か」など、強く関心を持ってます。消費者が求めている商品のあり方を真剣に丁寧に探っていきたい。

――社長就任は。
池永
 2008年、49歳で社長に就きました。当時、百貨店・量販店などで鉄器を販売することがステータスでした。当時、リーマンショックが起き、日本経済は大きく揺らぎ、生活にも価値観にも影響を及ぼしました。

――どのような体験を。
池永
 数年前、かき氷のブームで氷削機は追い風となりました。かき氷は単に冷たいだけでは飽き足りず、食感を深化させ、多様なメニューを生みました。その根底になったのが溶けながら口中で広がる、綿のようにふわふわに削った氷でした。

甘味店やカフェなどかき氷を提供するユーザーは365日、氷を削ってますから、冬と夏の氷の状態に違いのあることは体験上、知ってます。

ですから、当社はどんな条件、環境であっても「ふわっとした食感のかき氷」を保証することが使命です。

機器の堅牢性やデザインの改良に止まらず、回転や速度に関わる絶妙なギア調整、使う人にストレスを感じさせないハンドルの操作位置具合など、新たな領域に踏み込めて目からウロコを数多く体験できました。専門メーカーとしてのレベルが上がりました。プロフェショナルを語れる力を習得できました。

―――今後の商品開発は。
池永
 鉄器はいろんな使い方をされてます。低・中・高温のそれぞれに特徴的な性能が生かせます。熱源も多様です。酢など高い酸度の出汁(だし)といった不利な条件でも鉄器は使われます。

消費者と業務需要の違いもあり、そうした現場を知り、あらたな答を求めていきます。

一時期、鉄器は海外旅行客に受け入れられましたが、私たちの視線は「今だけ」ではありません。商品を作っても売れる保証のない時代です。商品開発は思い付きのレベルでは通用しません。

作る者は使う人の心に打つ商品に力を注ぐこと。売る者は商品のストーリーを語ること。プロフェショナルな姿勢は必須です。鉄器は長く愛用される道具ですからメーカーとして、きっちと責務を自覚したい。のちにはメーカーとして哲学を語ることもできるでしょう。今年、ここに意を注ぐ決意を固めました。
(2020年1月14日、大阪市東成区の同社本社でインタビュー)