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2022年03月31日

菊池嘉聡・タイガー魔法瓶社長「温度ビジネスは無限に」


菊池嘉聡・タイガー魔法瓶社長

100周年企業へ
 炭酸水やビールなどを冷えたまま野外で飲める真空断熱炭酸ボトル(炭酸ボトル)を2022年1月、発売して以来、テレビやネットニュース、新聞雑誌などで話題に上っている。これまでにも販売されていたが、欲しい商品としてヒットさせたのはタイガー魔法瓶だ。社内外の反響や来年迎える100周年企業への考えなど、菊池嘉聡社長に聞いた。
  
   
この炭酸ボトルは発売日を迎える前に販売計画の5~6倍の予約を承り、急きょ増産態勢に立て直しました。アウトドア用品の分野としても春から夏にかけてかなりの本数が見込めると考えています。

炭酸ボトルは魔法瓶として保冷性能に新たな機能をプラスしたもので、構造的にはシンプルなものです。これまでにも「炭酸系飲料を入れられるボトルは売ってないの?」との声はありました。海外商品など販売されていましたが、2年前、新たに開発にチャレンジしました。安全性や使い勝手、不便解消など、当社らしい細かな配慮を加えました。

通年商品という位置付けで、お客さまの欲しかったものが、1つの形になりました。想像以上に喜んでいただけています。何かを打ち破り、新しい風を吹かせたようです。シンプルな機能商品ですが、当たると大きな市場です。

当社社員食堂に炭酸水や水、お湯などの飲料をマイボトルに給水できるコカ・コーラ社のウォーターサーバーを実験的に設置しました。当面、利用状況などのデータを分析し今後に生かしていきます。

当社の企業理念の1つは、本質をきわめた独創性です。お客さまが暮らしの中での些細な困りごとを感じていても、「メーカーに伝えてもやらないだろう」と思いがちです。メーカーも「商品化しても差別化にはならないのでは」。あるいは「無理な注文でしょう」として割り切ってしまう。炭酸ボトルは、こうした事例を打ち破ったのではないでしょうか。

2006年発売の土鍋IHジャー炊飯器の土鍋釜は焼成工程を経て寸法精度を確保しなければなりません。部品の歩留まりとコストとのバランスが大事です。ここを乗り越えなければ他社にない土鍋の高級ジャー炊飯器の分野を切り開くことができなかったでしょう。土鍋IHはタイガー魔法瓶のブランド形成に欠かせない存在です。流通関係者にもしっかり浸透しています。

電気を使わなくてもある環境の下で一定の時間、保温や保冷ができる「真空断熱技術」は今後も有望です。もう1つ、意図する温度や時間を調整する「熱コントロール技術」もタイガー魔法瓶が持っている技術です。さらにこの2つの組み合わせることも当社ならではの技術です。

エンドユーザーは一般消費者にとどまらず、業務用としてレストラン、ケータリングサービス、厨房、客室などプロが使う分野です。産業用では住宅、医療、宇宙空間、自動車などへ温度に関わる技術を提供しています。温度ビジネスは無限にあると考えています。

2023年、100周年を迎えます。主材料がガラス製からステンレスへと切り替えても創業者の思いである「温かさや冷たさ、それを守る品質といった、温度に向き合い続けること」に変わりはありません。私たちはお客さまのお困りごとに常に向き合い、解決に向かいます。

100周年を通過点に、お客さまの本質的なニーズを掘り起こし、企業理念にどう当てはめていくか。「他社との違い。タイガーならこうする」を打ち出していきます。