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2017年06月15日

均一業界 「安さ」の次ぎは独自性

均一業界大手4社 「安さ」の次ぎは各社の持ち味
格差社会の現実が広がるなど、相対する出来事や事例が同時に存在する中で、100円ショップなど、均一業界の大手は景気の浮揚具合をにらみながら最適環境の創出に向かっている。均一店舗に消費者を引き付けるには「安さだけではない」というのが大手2社の共通した認識だ。100円を超える商品も含め、均一業界・企業が向かう方向はどこを向いているのか考えてみた。

客の飽きを緊張感に 大創産業の明日
百貨店、スーパー、コンビニ店に続き、百円均一の専門店・ダイソー(大創産業、広島県広島市)は「第四の業態」――十数年前、ある雑誌から矢野博丈氏はその創始者だという賞賛を受けた。

求人メディアには自らを「世界に類を見ないビジネスモデル」を言う。均一業界での大創産業のシェアは60%を占め、日本国内を制覇、海外でも26カ国・地域で1500店舗を開業している。

100円超の商品の構成比率を押さえ込みを制御できている限り、第四の業態として、世界唯一のビジネスモデルは継承されていくだろう。

矢野博丈社長の消費者観は、十数年前から、「十人十色だった時代から、一人十色、一人百色と言われる多様な価値観の時代となった」という認識だ。客から飽きられることに緊張感持ち続けている。客から飽きられないことが第四の業態のキモでもある。

消費者にとってお店とは、「人が暮らしていくためにいろいろなニュースを提供してくれる」情報発信の機能があると言う。「同じコンセプト・看板・レイアウト・品ぞろ」をしなしいというダイソー流の背景もここにある。

多店舗経営をしていく上での効率化、ローコストは維持するが、マニュアル化はしない。『すべてはお客様に飽きられない店舗を創るため』のダイソー流の出店戦略である。

一方で、「『100円だから売れる』という時代は終わった」と、百均経営の一部を否定し、改革を目指している。「安さで売るのではなく、人間力で売る」。これも矢野社長の持論であるが、側面から商人道が問われてもいるのだ。

100円にこだわる セリアの改革とは
セリア(岐阜県大垣市)の河合英治社長は、「100円ショップは、『安さ』を売りにしてきた従来スタイルは終わり、新たなステージへ移りつつあります」と、均一小売業態の進化を説き、営業店舗の改善に取り組んでいる。

100円商品の提供に強くこだわってきたセリ。どれも100円という感動や安心感に加えて、ゆったりした店内という買い物環境も大事だというわけで、都市部を中心に新たなセリア・ファンを獲得している。

年間100店舗以上ずつ店舗数を伸ばしながら、新しいセリアの業態店「Seria color the days」は都市部での出店に重点を置いている。洗練された店舗デザインが新しいセリア、これからの均一小売り業態を示している。直営店の5割を超えており、今後の出店動向が注目される。

品質へのこだわりがある。電気製品や繊維製品の品質を磨き、プラスチック製品の大半は日本製で、国産品特有の気配りがセリアの商品から見て取れる。

需要予測システムの開発にも投資し、独自のシステム構築に取り組んできた。商品ごとの需要の予測精度を高め、これをメーカーとの受発注にも連動していく。

新商品のテスト販売などにも生かされ、業務の効率化、商品化への時間短縮などが改善されている。

経営指標では2017年3月期と2008年3月期との対比は営業利益率3.6→10.4、売上高原価率60.4→57.1、販管費36.0→32.5へと大きく改善している。

売上高と営業利益の対比は632億円→1453億円2.3倍、営業利益22億円→151億円7倍弱、本社から直営店舗への円滑な指示情報が流れている効果と見るべきか。

基本のキに返るキャンドゥ
キャンドゥ(東京都新宿区)は支持層の拡大をはじめ、ブランドを重視した商品・店舗・業務の在り方に絞り、改革が進められている。

商品面ではコストと品ぞろえ。特に、新商品は独自商品をシリーズ化するというもので、コスメチック関連や女性を想定した商品展開し、SNS活用で認知度の引き上げにも一定の効果を上げている。

業務面では商品と販売の両部門の連携強化しながら、店舗での実例を積み上げ、成功事例を積み重ねていくという作業だ。

現場力の掘り下げとして、店舗の改善では基本的な作業を再点検するという手法だ。手順の標準化や効率化といったレベルで精度を高めていくもので、やはり実例実績の積み上げに力を注いでいる。

機動力が支えるワッツとは
ワッツ(大阪市)は品ぞろえを絞り、割安感を強調する一方、新店の際、大幅な改装などをせず、居抜きでの出店もいとわない実利主義だ。「大きくない企業規模」を生かし、小回り・機動力で均一小売業に食い込んでいる。

「ワッツ」「ミーツ」「シルク」といった複数の店舗名で営業している。それぞれ店舗イメージの改良にも取り組みながら、「ワッツ」への統一も模索し始めた。ブランドの統一化のきっかけをつかもうという。

企業譲渡や協業、共同出資などもビジネスモデルの念頭にあり、業容の拡大に精力を傾けることも惜しまない。これらの企業は同業の均一企業のほか、ファッション雑貨、仕入れ国を中国だけでなく北欧にも求めた小売業、生鮮スーパーなどが現在も営業中だ。新しい可能性には挑戦していこうという企業精神である。

このため、海外進出では2009年、タイ・バンコクに開店したのを契機に、中国やマレーシア、南米ペルー、ベトナムにも開店している。年商461億円のうち、海外は19億円、構成比4.1%を占めている。

2017年4月にまとめた今期後半の出退店の計画は出店58、退店37。期末の店舗数は10061店舗の計画だ。2015年1000店舗を超えて以来、店舗数は維持されている。

均一市場を取り巻く経営環境について、「原油価格は当面低位安定することが見込まれることに加え、為替は当面大きな円安方向に振れる可能性は低い」としている。

人手不足感があることから、「賃金、時給の引き上げによる所得増加は見込まれるものの、物価上昇は限定的」として、消費者心理では、「デフレマインドからの脱却は、依然道半ば」として、均一小売業へのニーズは多様化という見方を示している。