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2013年10月21日

中堅以下のスーパー、苦戦が鮮明に  売上「10 億〜50 億円未満」では4 社に 1 社が 赤字

【帝国データバンク 特別企画:全国スーパーストア770社の経営実態調査】
 今年に入って、望月巌商店(静岡県、負債 59億 8000万円)や東京ストアー(石川県、同 55億 1900万円)など地場中堅スーパーの倒産が続いている。日本チェーンストア協会がまとめた上期(2013年1月〜6月)の全国スーパーの総売上高は前年同期比 1.5%減。アベノミクス効果に沸く百貨店とは対照的な結果となった。中でも中小のスーパーが直面する現実は深刻だ。一部の大手スーパーは全国に店舗を展開し、ドラッグストアも食料品の品揃えを充実させるなど顧客の取り込みに余念がなく、その影響が中小に出ている。 

帝国データバンクは、企業概要データベース「COSMOS2」(144万社収録)から全国のスーパーストア経営業者を抽出、売上高が 10億円以上で過去 3期分の業績比較が可能な 770社の経営実態を分析し、あわせて倒産動向もまとめた。 イオンリテール(千葉市美浜区)は、2012 年 11 月期(9カヵ月の変則決算)と 2013 年 2 月期(3カ月の変則決算)を合算し、過年度決算と比較。
(1) 年度別総売上高の推移〜2012 年度は前年度比0.1%増

2012 年度(2012 年 4 月期〜2013年 3 月期)の総売上高は21兆5340億4900万円で、前年度(21 兆 5083 億 9700 万円)を 0.1%上回った。近年、スーパー各社はPB(プライベートブランド)商品を拡充するほか、不採算店舗の業態転換などで収益を拡大している。少子化などにより市場規模の縮小が叫ばれるなか、さまざまな取り組みで売り上げを確保している。
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(2) 売上高規模別増減収推移〜「100 億〜500 億円未満」では 3 社に 2 社が減収
売上高規模別の増減収推移は、売上高「1000 億円以上」(36 社)の中で 2 期連続増収とな
った企業は 17社(構成比 47.2%)。増収転換(2社、同 5.6%)と合わせると半数以上の 19社(同
52.8%)が増収となった。
「500億〜1000億円未満」(47社)では 2期連続増収が 22社(構成比 46.8%)、増収転換 1社

となった一方、2期連続減収(11 社)と減収転落(13 社)を合算すると減収が 24 社となり増収を上回った。
「100億〜500億円未満」では 2期連続減収が 74社(構成比 40.9%)、減収転落(47社、同26.0%)と合わせると 121社となり、3社に 2社が減収となった。
売上高規模が縮小するにつれ、「2期連続減収」となる割合が高くなる傾向にある。「10億〜50

億円未満」では過半数(190社、同 51.4%)が 2期連続減収となった。
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(3)売上高規模別損益推移〜売上高「10 億〜50 億円未満」では 4 社に 1 社が赤字
売上高規模別に黒字と赤字の割合は、「1000 億円以上」では 2 期連続黒字が 31 社(構成比 86.1%)となった。黒字となったスーパーは、黒字転換 1社(同 2.8%)を加えると 32社(同8.9%)となり 90%弱を占めた。

「10億〜50億円未満」では 2期連続黒字が 228社(構成比 61.6%)となり、「1000億円以上」の構成比と比較すると 24.5ポイントの差が生じている。また、「10億〜50億円未満」では、2期連続赤字と赤字転落を合わせると、91社で 25%弱の企業が赤字に陥っている。
(4)地域別売上高動向〜 「東北」「北陸」で 7割超が減収
地域別にスーパーの増減収を見ると、全ての地域で減収が増収を上回った。東日本大震災後直後の復興特需に一服感がみられたことに加え、業界内の価格競争やドラッグストアの食料品販売などが影響しているものと思われる。

「北陸」(78.0%)と「東北」(73.6%)の 2 地域では減収が 7 割を超えており苦戦が続いている。「北陸」では、福井県が原発停止の影響を受け作業員を引き揚げるなど嶺南地方を中心に景気が悪化。石川県では店舗過剰なかで大手スーパーが出店している。「東北」も震災発生後から大手が相次いで出店、顧客が地場スーパーから大手に流れたほか、震災特需の反動減が表れた。
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(5)2012 年度売上高動向〜トップはイオンリテール
売上高トップは総合スーパー「イオン」、食品スーパー「アコレ」を経営するイオンリテール(千葉県)の 2 兆 1536 億 700 万円。今後はシニア層に重点を置くほか、E コマース市場による市場拡大を目指す。
第 2 位はセブン&アイ・ホールディングス系のイトーヨーカ堂(東京都)で 1 兆 3322億 9200 万円。近年はネットスーパーの売り上げが拡大しているほか、人気アイドルグループをCMに起用して若年層向けの衣料品等を投入、幅広い年代層を取り込んでいる。

第 3 位はユニーグループ・ホールディングス(愛知県)の 7689 億 3900 万円。中部地区を中心地盤とした総合スーパーストアで、「ピアゴ」「アピタ」などを展開する。
第 4位はダイエー(東京都)の 6681 億 2000 万円。イオンはTOBによって同社を傘下に収めることを 2013 年 3月に発表している。
第 5位はライフコーポレーション(大阪府)の5203 億 8300 万円。首都圏と近畿の2大消費地にそれぞれ事業本部で出店すると同時に、大型店の集中する商業集中地の狭間を狙った営業を展開する。

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(6)倒産動向〜負債総額は既に前年超え
2013年の倒産件数は1月から7月までの累計で 52件発生している。このペースで倒産が進むと、2011 年(103 件)以来 3 年ぶりに 100件割れとなる。
(7)今後の見通し

総売上高が増加する一方、地域別の業績を見ると多くの企業が減収となっているように、業界では勝ち組と負け組みの二極化が鮮明になっている。一部の大手はM&Aや海外進出により収益
を確保しているものの、中小スーパーにはそれだけの体力がないことが原因だ。
アベノミクスによる経済効果でデフレ脱却への糸口は見えたものの、現時点ではその恩恵が一
般消費にまで浸透したとは言い切れない。ネット通販の更なる拡大や他業種の食品販売事業参入も全国のスーパーストアに大きな影響を与えるだろう。

今後、大手スーパーが収益確保を求めて地方への出店を加速させると、地場スーパーを中心に
倒産が増加する可能性もある。