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2013年12月09日

象印マホービンの高級炊飯器 プロジェクトチームで巻き返し

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『南部鉄器 極め羽釜』はこうして作られた
 
2013年12月、NHKテレビの大阪放送局が2013年12月1日の日曜日朝放送の番組「ルソンの壺」で、象印マホービンの商品開発に向かうメーカー姿勢が紹介された。炊飯器市場での巻き返しを図るため、部署を横断したプロジェクトチームによって、消費者により寄り添うものづくり、本質に立ち返ったという内容だった。

 この番組は関西を元気にする人たちが紹介されてきた。同社の事例では、 「目指すは”おいしいごはん” 高級炊飯器 開発への道」のタイトルが付けられた。以下、番組の一部を再録。

 炊飯器市場の中で、5万円を超える高級機種は出荷台数で15%、出荷額では30%を占めている。このため、国内メーカーの7社がこの市場にしのぎを削っている。一方、同社では年間200万台超の炊飯器を出荷しており、売上高に占める比率はおよそ4割で、魔法瓶とともに主力商品という位置付けながら、「メード・イン・ジャパン」にこだわってきた。
 
同社の執行役員・経営企画部長の宇和政男さんが高級炊飯器の推進役として紹介され、「高級炊飯器とはごはんがおいしく炊けること。この一言に尽きます」と、高級炊飯器への開発姿勢をこう言う。

 1970年(昭和45年)、炊いたごはんを電気で保温する器具を手掛けた経緯から以後、マイコン→IH→圧力式IHといった新技術を取り入れながら、「便利でコンパクト」な炊飯器という評価につながり、高いシェアを誇ってきた。

 2006年(平成18年)、競合大手メーカーから10万円の新たな高級機種を切り開く炊飯器が発売され、各社も追随をした。一方、同社はこれまで通り、「便利でコンパクトな炊飯器」を踏襲しながら、「このままでは高いシェアは維持できない」と危機感から、7万円台で、多機能タイプを発売した。が、結果はもうひとつ…。
 
宇和さんは原因について、「総合点で勝負していた。消費者の高級炊飯器へのニーズはごはんのおいしさであり、本質に迫るべき炊飯器を作るべきだった」と、当時を振り返った。

2009年(平成21年)、同社は巻き返し対策として、技術部門スタッフによる開発手法を改めて営業や広報、アフターサービスといった直接消費者らと接する機会の多い部署、社員らを加えた全社横断的なプロジェクトチームを立ち上げた。
 消費者の求めている「おいしさの定義」と、社員たちのそれとが同じである」という原点から再スタート。社員たちは街にある「おいしいごはん」のお手本を捜し求めたなかから、

「50年間、かまどでごはんを炊いてきた」という食堂経営者と出会った。
 この店では釜の形状や炊飯中のごはんの加熱状況などを検証。同時に、宇和部長が「コンパクト・使いやすさ・デザイン」といったかつての成功体験に基づいたキーワードを忘れようと呼びかけた。

 プロジェクトチームの立ち上げから18カ月後、新製品「南部鉄器 極め羽釜」が完成した。半年先の目標台数は3カ月間で達成した。

 部署を全社的に横断したプロジェクトチームはその後、炊飯器以外にも生かされ、商品の本質的な機能にこだわったものづくりが定着しつつある。中堅若手の人材育成や実力の発揮などにも生かされている。
 宇和部長は「これでいいのだ、という慢心はだめ。失敗を体験として学ぶ姿勢は企業の成長にとって大事」と、締めくくった。

【写真の説明】上の段、左から、「南部鉄器 極め羽釜」、鉄製の内釜、南部鉄器。下の段、左から、象印まほうびんの国内工場、宇和政男さん、当時のPTの社員たち