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2020年12月28日

座談会・家庭用品業界の今 【リビングタイムス主催】①

【座談会】問屋・メーカー社長6人が語る
家庭用品業界の今

コロナウイルス感染の広がりとともに、大人も子どもも人は「家庭に戻り」、家族の在宅時間は一挙に増えた。料理に掃除洗濯、整理整頓などの家事に振り向けられ、関連の用品は特需が起きた。一方で取引企業間の情報交流は滞り、イベント開催などにも影響を及ぼしている。そこでリビングタイムスでは家庭用品関連の問屋とメーカーの代表者に集まっていただき、座談会を開いた。コロナによってどんな変化を強いられ、どう手を打ってきたのか。さらに2021年に向けて何を課題に臨もうとしているのか、話をしていただいた。

ご出席の方々(発言順)
石川宣博・中山福社長
池田克也・梶原産業社長
高木満郎・髙木金属工業社長
吉川利幸・吉川国工業所社長
池永一雄・池永鉄工社長
猪又晶介・イノマタ化学社長
(座談会は2020年11月12日、大阪富士屋ホテルで開催)

 

 

――2020年はコロナ感染の脅威に翻弄されました。これに関連して各社がどのように受け止めて、現在何に取り組んでおられるのか、といった話題からお話ください


石川宣博・中山福社長

家庭用品に目が向いた/切実だった情報不足
石川 中山福にとっても2020年はコロナに振り回された1年でした。さらにもう1つ大事なのは流通業界の再編がいよいよ最終章に入りつつあります。大きな動きとなってくるでしょう。

コロナ禍の1年ではインバウンド需要がゼロになりました。家庭用品への恩恵度合いは正確にはつかめないが、売上高の5%程度をインバウンド需要で占めていたと推測しています。これがほぼゼロになり、影響がくっきりと残ってしまいました。

一方、国内消費では業績にアップダウンがありました。20年3月~5月は消費者の行動が制限され、小売業も客を呼び込むことができない状態が続き、深刻な状況でした。

一方、家庭で過ごす時間が増えたことで、特に6月以降は家庭用品の売上が増加に転じました。すなわち、いわゆる「巣ごもり」ということが消費者の関心を家庭用品に向けてもらえるきっかけになりました。調理用具をはじめ、お菓子作りや片付けのための収納などの用品、清掃用品などなど、いろんな家庭用品に目が向けられることにつながっていきました。

コロナ禍のいい面と悪い面、総じて言うと、家庭用品というものに消費者が目を向けてくれた1年であり、きっかけの年でした。このようにポジティブに受け止めています。

今後も、おそらく家庭で過ごす時間が増えるという状況はある程度続くと思います。

「家庭用品にスポットが当たった」ことにわれわれが関心を向けていくことが大事です。

――単独見本市が2020年秋、開催されました。

石川 コロナ禍が下火になったとは言えない状況の下で、当社は個人見本市を10月20日から3日間、横浜市で開催しました。通常なら7月に開催しているのですが、さすがその時期の開催は躊躇しました。

開催にあたってメーカーの協力を得ました。コロナ感染拡大が猛威を振るっている中でも、メーカーは積極的に商品開発を進めていました。ところが小売店や消費者にそうした情報を伝え、商品をお届けすることが難しい状況でした。情報の不足は小売業もメーカーもともに切実な声として伺っていました。

10月開催は小売業が年末や春商戦を準備していただくぎりぎりのタイミングでした。閉幕後、さっそくにいろんな商談が進みました。関係者の皆さんから評価をいただいた。喜んでいただけたと思います。

 


池田克也・梶原産業社長

いち早くズーム商談/オンライン商談進める
池田 梶原産業では2020年11月16日から約1カ月間、オンライン商談会を開くよう準備を進めています。電響社グループ全社で開催します。

事業所単位で午前・午後それぞれ1組単位でお招きし、パソコン画面に映像を流しながら商談をするという具合です。

特に関東周辺の得意先様は、対面商談が難しい状況となりました。もともと11月に展示会を予定していたのですが、従来型では商談はできず、見本市を中止し、代わってオンライン商談会に移行する準備を進めてきました。

従来通りの手順や密度のある内容とまではいかないが、それなりに考えた提案はさせていただきます。

――ズーム、ビデオ会議など機器の準備にも時間がかかります。

池田 当社ではいち早く、ズームによる商談のための関連機器を準備してきた。ズームにおける画面対面、メール交換など商談を進めてきましたが、なかなか、温度感が伝わりにくく、もどかしさを感じました。

こちらの熱意も相手様の要望も、双方の思いが伝わりにくかった。商品に触れないので現物の質感なども伝わらない。
オンラインではサンプル展示の場所を設けます。5分間程度に編集したビデオ映像を用意し、テレビ通販のようにコーディネーター役を付けます。企画書や見積書もダウンロードできます。

メリットは遠方の得意先様にも広範囲にお声掛けができ、地域的な制約がありません。

 


高木満郎・髙木金属工業社長

家庭で使うもの売れた/コロナ特需は一過性
髙木 2020年は情報不足を痛感しました。時間が止まっていたような印象です。19年末から20年明けにかけては暖冬で、前年の同じ時期に比べて売上はかなり厳しかった。ところがコロナ禍による巣ごもり需要で、20年2月ごろから前年対比を上回り始め、5月~7月にかけて大きく売上が伸びました。

弊社では、てんぷら鍋やオイルポットなど油周りの製品がよく売れました。同業他社でも欠品状態になったようで、通常では考えられない状況が続きました。

臨時休校のため家にいる子ども達に、唐揚げやトンカツを作る家庭が増えたことと、コロナ感染を警戒してスーパーの惣菜を買い控える動きがあったことなどが、需要増の要因だったと思われます。

また、「レジ袋の有料化」は弊社のショッピングバッグの売れ行きを押し上げる要因となりました。

家庭内で使用される家庭用品メーカーのほとんどが売上を伸ばしたと聞いています。

――経費は逆に減った。

髙木 出荷量が増えたので運賃は増加しましたが、出張費や接待費、広告宣伝費などは大幅に減り、営業面ではまあまあ良かったと言えます。製造面では残業や新規外注先の確保などで対処しました。

ただ、こうした状況がずっと続くとは思えません。コロナ禍特需は一過性のものだと考えています。

 


吉川利幸・吉川国工業所社長
ブランド浸透に力/巣ごもり特需4月末から
吉川 吉川国工業所でもコロナの特需はありました。 決算は8月期です。前期62期の目標は「ライクイット」ブランド浸透、在庫・生産のバランスの最適化、マーケティングの活用、働き方改革への対応でした。

62期前半、19年8月から20年2月頃まで、国内需要は低迷し、3月と4月、いかにして業績を上げるかということで、ブランド浸透に力を注ぎました。

当社の販売構成比率は国内8割、海外2割。2020年2月に中国での売りが止まり、3月はアメリカのニューヨークとカリフォルニアがロックダウン(外出制限)し、小売り店が店を閉めて、「リストラだ」と言っていた中、4月の出荷分から8月までの受注が消滅。海外の販売がすべてキャンセルになった。

一方、国内に向けてはブランド力アップに集中しました。4月末ごろからその効果が見え始め、「巣ごもり特需」へとつなり、海外のキャンセル分を吸収できた。輸出用の在庫をすべて国内販路に振り向けました。

――海外市場が回復したのはいつごろから。

吉川 5月ごろから、中国が回復し始めて国内の巣ごもりと重なった。5月~9月、フォローの風が吹いて前期並みの業績を維持できました。

20年8月スタートの63期は11月から2021年にかけて、巣ごもりの追い風をキャッチし続けられるかが鍵を握ってます。

現在、自社の業務スタイルは自宅待機や在宅勤務を続けています。海外出張の禁止、リモート業務・商談を指示しています。
この結果、雑事が減り、交通移動や展示会への出展活動がなくなった中でいかに売上を作るかに集中しています。

 


池永一雄・池永鉄工社長
コロナ禍で意識改革/盛り上がらなかった夏
池永 池永鉄工は近年、ウェブ事業をはじめギフトや生協などでの販売に関心を寄せてきました。

コロナ禍では訪問や商談の在り方、さまざまな業務面での時短、意識改革などを進めてきました。こうした変化対応のもとでも営業売上はしっかり稼げるのだという実感を得ています。経費の軽減などにも冷静に観察ができ、営業所でのコストや物流の小口化、見直しなど、改善すべき課題に取り組んできました。

メーカーはもの作りに力を集中することが一番大切と痛感してます。

かき氷機は契約販売が前提で、2月~3月、取引業務が活発化します。コロナ禍の影響で得意先店舗の休業など、環境が大きく変わりました。恒例のイベントや夏祭りの中止、海水浴は海開きされず非常に厳しい状況でした。

関連業界の展示会も開催されずに4月と5月を迎え、7月の最盛期も盛り上がりませんでした。

当社は6月決算で、当期の業績は家庭用品部門と建築関連商品が微増となった半面、業務用部門は減収でした。新期では8月~10月、先が見通せるような情報が集まりにくくなっている。それでも立ち止まっているわけにはいかず、事業計画に沿って何とか前期業績を挽回できるようにがんばります。

 


猪又晶介・イノマタ化学社長
好転は3月末から/消費者の行動が変化
猪又 直近のイノマタ化学の販売構成比は均一業界がおよそ60%となってます。

日本国内ではコロナ禍のもとで全体的に業績悪化の企業が多い中、家庭用品業界では業績が良い企業が多いと聞き及んでます。
ステイホームという言葉が言われる中、家事分担の意識も高まってきているように感じられます。

当社の決算日は10月20日で、前期は2019年10月20日から翌年2月まで前年同期比を下回っていたが、コロナ禍の影響で3月末から急に注文が増え、通期業績は前期より10%伸びました。

同じ均一商品でも装粧小物など、外出に伴う商材の業績は伸びが鈍かったようで、家庭内で使うものが良かったのはコロナ禍の影響で消費者の行動が変化したためと思われます。
(座談会続く)