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2017年08月13日

オンリーワン製品を作る プラスチック日用品メーカー

オンリーワン製品メーカーとは
岩崎工業(奈良県大和郡山市)はオンリーワン製品の開発に力を注いでいる。海外での市場開拓が進み、国内外とも新たな展開を見せている。日本製として、他社に見られない、競争力がある製品開発はどのようにして切り開かれたのか。

プラスチック日用品メーカーとって独自性とはプラスチックの原料や成型技術、成型後の2次加工、機能、パッケージを含めたデザインなどに及ぶ。

岩﨑能久社長の独自製品へのこだわり感と強力な牽引力を押し出す一方で、「結果を見るまで投げ出さない」という粘着力も商品開発や生産の現場などに行き渡らせている。

冷蔵庫・冷凍庫で食品を保存する容器など、同社のオンリーワン製品が高品質を求める市場に受け入れられ始めている。日本製品に注目する海外バイヤーらも取引を開始。さらに同社が本社や主力工場を置く奈良・三重の自治体などからも支援を受け、製品開発や新増設の工場施設などへの投資が活発化しており、地域貢献度にも寄与している。

消費者の不満ヒント 容器のパッキン交換
オンリーワン製品の開発に向かわせた理由の1つが消費者からの問い合わせだった。食品容器のパッキン交換ニーズが多すぎる。岩﨑社長は自社製品の完成度に着目した。便利で安心・安全な生活に役立つ家庭用品の提供は関連メーカーにとって適正価格と同様、必須のテーマだ。

パッキンの交換も衛生懸念も不要な「スーパー容器」完成へのハードルが高く、2年半を費やした後、ようやく食器洗い乾燥機もOK、パッキンを外さずに洗う手間が簡単な4面ロックの食品容器「イージーケア」を製品化した。

2016年9月、北米市場で先行販売した後、日本国内でも同年末から販売。

イージーケアは成型工程や2次加工でも独自の技術開発は止まず、成形時間の短縮や密封度を高めるヒンジ加工などにも自前のノウハウは及んでいる。

円でない形をきれいに成型するということは
一方、冷水筒は現在、透明度や耐熱性能が優れたAS樹脂だ。同社が想定する一般的な使い方は――冷水筒に熱湯を注ぎ麦茶を抽出→粗熱を冷まして冷蔵庫へ→庫内では縦・横置きOK→ふたは取り出しやすい取っ手付き→本体は内側を手で洗う。いつどんな状態で使っても不満を覚えずに使える冷水筒。

ここでもオンリーワンの製品化に結び付けた。同社最大容量の3㍑タイプ(k-1283)は底部を広い台形状にデザイン。こうすることで安定性を確保し、空洞部分=「溜め(ため)」を設けることで勢いよく麦茶が飛び出ない。左右非対称デザインはこうした理由からであった。

だが、AS樹脂をこの形に成型するのは難しい。成型工程を2段階に分ける「インジェクション・ブロー成型」で解を見出した。成型時、製品大に膨らませる(ブロー成型)の前段で、インジェクション(射出)成型の工程で3分の1程度大きさの円筒状に成型したのち、製品大にブロー成型する。一連の工程には成型機メーカーと共同でノウハウの蓄積がある。高機能の原料樹脂と高性能な成型機を投入しただけではオンリーワン製品は生まれない。

国や自治体の支援が勢い 2017年末に新増設
成型メーカーの独自技術の開発を進めたり、人材育成や雇用促進などを進めるうえで、国や自治体の支援制度が効いている。

中小企業庁が技術や技能など技を持つ企業として、2016年度中小企業300社に選出。これより前、新素材(不飽和ポリエステル)でポリプロピレンの20倍、柔軟性や透明度があり、食器洗い乾燥機OKの食品容器「マイクロクリア」が2015年近畿経産局から、「市場創出」分野で選定されている。

本社や工場のある奈良県や三重県では事業の振興やサクセスストーリーの事例として自治体の支援を受けている。直近の三重県松阪市との協定で、品質管理や2次加工ための施設を2017年内稼働を目途に、建て延べ500平方㍍を新設する。可動式のクリーンルームの基準は9段階の最高位「クラス1」を導入の計画だ。


岩﨑能久社長

「ラストロ」ブランド 世界市場へ切り込む
世界市場をにらんだ岩崎工業はブランド名「Lustroware」を展開していく。販売構成比は国内80%、海外17%だが、全社的な成長を図りながら、2020年には海外20%に引き上げていく。

品目別の販売構成比は食品容器50%、冷水筒30%、ゴミ容器15%など。

 

岩崎工業
〒639-1081 奈良県大和郡山市額田部北町1216-5