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2018年09月10日

【インタビュー】伊藤彰浩・ワンダーシェフ社長


伊藤彰浩社長

圧力鍋は「おいしい」
圧力鍋の出荷は9月から翌年1月が繁忙期で、圧力鍋協議会(伊藤彰浩会長、加盟企業8社)によると年間出荷台数は80万台、電気式37万台(2017年度)。10年前をピークに年々減少だったのが、2016年度から持ち直した。ワンダーシェフ(大阪府豊中市)の伊藤彰浩社長に専業メーカーとして消費者や流通関係者にどうアピールしていくのか聞いた。

――普通の鍋に比べて違うところは。
伊藤
 圧力鍋での加熱時間は3割~4割近く短縮できます。省エネでもあるのに、ユーザーに理解されず、「怖い」「面倒」な調理器具といったマイナスイメージが先行しています。ユーザーへの確実なフォローが「不安の払拭」につながっていきます。

負の印象を拭い、購入をためらう人たちに「思った以上に速く料理ができる」ことを訴えています。なによりも圧力鍋を使った料理はおいしい。普通の鍋では味わえない。料理に感動してもらえることに尽きます。

――消費者、ユーザーへの啓発は。
伊藤
 レシピの充実も大事です。購入のユーザーには取扱説明書のほかにレシピ本を付けています。内容は料理本と同レベルで、「おまけ」ではありません。当社の本気度を知ってもらえるでしょう。

インターネットでも、当社ホームページに常時、レシピ350種類を紹介。毎月2回、ユーザー宛に季節のレシピをメール配信。ユーチューブ、フェースブックなどを使い分けながらコンテンツの鮮度アップに心がけています。

ユーザーの電話やメールでの質問や相談などにも担当部署があたり、修理品の進行状況も即答できます。

ユーザー情報は毎日の朝礼で共有し、出張中の従業員にもメールが届く。

ユーザーの声は流通バイヤーにとっても大切で、商談を通じて情報を提供しています。

――ワンダーシェフのメーカー姿勢とは。
伊藤
 おいしい、楽しいを提供。ユーザーの幸せへの一端を担っているという意識と行動です。
「ワンダーシェフで料理をしているのに、レシピ通りにできない。どうしたらいい?」といった疑問や相談には、ユーザーの調理手順を当社で再現し、同じ目線で向き合い解決を探っています。

――ワンダーシェフの圧力鍋の品質管理について。
伊藤
 中国工場もSGマーク(製品安全協会)の圧力鍋製造認定工場です。

当社は商品企画と設計のほか、完成品の全品を大阪本社で検品しています。目視・触感→圧力調整弁やネジ周りの「締め直し・増し締め」→高圧までの加圧・スロー加圧の2工程をテスト。合格品にSGマークを貼付し、再梱包して出荷となります。
――あえて他社品と比べると。

伊藤 一般的な圧力鍋の上限温度は約120度ですが、当社は126度。6度の差は加圧時間を3分の1に縮めます。除菌効果も99.9%というデータで、哺乳瓶の消毒で育児ママに貢献できます。

――流通関係者へは。
伊藤
 リアル店舗は鍋を手にとってもらえる貴重な場なので、店内用POP、パンフレットなどで密度の濃い情報を提供しています。

ネット販売業者にはホームページでのレシピ提供で、中身の濃さと鮮度アップを念頭に置いています。

――業務ユーザー向けは。
伊藤
 8リットル~30リットルという品ぞろえの良さです。IH熱源にも使えるステンレス製、20リットル型が代表的な機種です。

業務ユーザーの中には「短時間で出来上がってしまう圧力鍋を使うことは手抜き。じっくり時間をかけて煮込んだりすることが仕事」という価値観が根強く残っています。

今後、サービス業へと発想を広げてもらう一方で、「圧力鍋は普通なべでは出来ないおいしい料理ができる」ことを強く訴えていこうと考えています。2018年4月、日本栄養士会に賛助会員として加入しました。食材ごとの食感を楽しんでもらえる調理や嚥下や介護食に貢献できる圧力鍋の専門メーカーとして提案していきたい。
(2018年9月7日、ワンダーシェフの本社でインタビュー)